チョコのテンパリングは本当に必要?味覚センサーで味の違いを分析してみた!
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 バレンタインでチョコを手作りしようとレシピを眺めていると、「チョコレートのテンパリング」という作業の必要性に出会います。テンパリングとは、温度調節によってチョコレートに含まれる油脂の結晶を整え、口当たりや風味を最も良い状態にする作業です。大まかな手順としては、チョコレート断片の温度を45〜50℃に上げて溶かし、26〜28℃ほどに下げて、再び30〜32℃ほどに上げるというものです。

 文字に起こすと簡単な作業に見えますが、実際にこれを家庭でやるとなると、

「50℃で寸止めするのが難しい…」
「60℃以上になると成分が変質するってマジカヨ〜(60℃を超えた温度計を目にしながら)」
「そもそも、温度計持ってない(強気)。」
「28℃から32℃に上げるとき、あっという間に40℃を超えてしまってやり直し…(もう3回目)」
「チョコを溶かすのなんて、チンでいいでしょ、チンで!」
「っわ!!湯煎の水入っちゃったよー!!分離するううううう」

 などなど、実に不平不満ポイントに溢れている作業であることがわかります。テンパリングは、本当に必要なのでしょうか。テンパリングの有無による味の違いは、素人に分かるほど明白なのでしょうか。あなたのカレピッピや好きな人の味覚は、そこまで発達しているのでしょうか。

 これからバレンタインを控える皆様の代わりに、調べてみました!

3種類のチョコレートでテンパリング実験

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 さっそく、テンパリングの有無の違いを調べてみましょう。テンパリングは油脂のコントロールなので、含まれる油脂の種類が明確に異なりそうな3種類のチョコレートを用意して検証を行いました。まずは、製菓用のチョコレート(左)。こちらの原材料は「砂糖、全粉乳、ココアバター、カカオマス、乳化剤、香料」です。

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 次に、市販の板チョコ2種類(右)。ひとつは、原材料が製菓用チョコレートと同じ「砂糖、カカオマス、全粉乳、ココアバター、レチシン(乳化剤)、香料」です。

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 もうひとつは、同一の原材料に加えて、油脂にカカオ由来ではない「植物油脂」を含むタイプのものを用意してみました(砂糖、全粒粉、カカオマス、ココアバター、植物油脂、乳化剤、香料)。

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 テンパリングをするサンプルは、湯煎で50℃にしてから、氷水につけて28℃まで下げて、再び湯煎にかけて32℃に戻し、型に流し込んで粗熱を取ってから冷蔵庫で冷やす、という手順で作りました。

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 (100g分のチョコレートをそれぞれボウルに入れます。)

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 (湯煎で50度になるまで温めます。)

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 (使った温度計はこちら。)

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 (氷水の入った小鍋で28度まで冷ましたら、再び湯煎に数秒かけて32度にします。)

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 (すべてのサンプルを型に流し込んだのち、粗熱をとってから冷蔵庫でやします。)

 テンパリングをしないサンプルは、湯煎で50℃にしたら、そのまま型に流し込んで冷やして作りました。それぞれ、1サンプルにつき100gのチョコレートの断片を溶かしました。

 固まるのを待つこと小一時間、一体どんな味の違いが待っているのでしょうか…!

テンパリングによる味の違いは?

 2時間ほど経ち、チョコレートが固まったので、取り出してみましょう。まずは見た目の違いです。

 まずはテンパリングありのもの。左から順に、製菓用チョコレート、植物油脂のないチョコレート、植物油脂を含むチョコレートです。

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 次に、テンパリングなしのもの。左から順に、製菓用チョコレート、植物油脂のないチョコレート、植物油脂を含むチョコレートです。

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 テンパリングの有無では、チョコレートの表面には大きな違いが観察されませんでした。

 また、切断した様子についても、3種類いずれも大きな違いは観察されませんでした(左がテンパリングあり、右がテンパリングなし)。

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 これより、テンパリングの有無によって、少なくとも冷やし始めて2時間程度の段階では、見た目に大きな違いは生じないことがわかりました。テンパリングをしないと見た目も変わるという情報もあるようですが、今回は、素人目で区別できる致命的な違いは感じられませんでした。

 これだけ見た目が似ているなら、味も変わらないのではないか…?

 そう思い口に含んだところ…

 味、明らかに違うヤーン!!

 テンパリングした方がコクがあり、味に深みがあるように感じられるのです。一方でテンパリングを行っていないものは、にゅるっとした油っぽさがあり、味が平面的で、深みがありません。3種類のチョコレートはそれぞれ元の味が大幅に違いますが、テンパリングの有無による味の変化の傾向は、3種類に共通していました。テンパリングしゅごい!!

 しかし、テンパリングによって明らかに味が変わることが、私にはわかったのですが、いまいち読者の皆様に伝わった気がしません…そこで、最後に、味の数値化に挑んでみました。

味覚センサーで味の違いを数値化!

 今回登場してもらうのは、AISSY株式会社の味覚センサー「レオ」です。

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(AISSY株式会社・代表取締役の鈴木隆一さんと味覚センサー「レオ」)

 レオは、人の舌の味覚を再現しているセンサーで、私たちが食べ物を食べたときに感じられる基本5味(甘味、旨味、塩味、酸味、苦味)の強さを1〜5段階で数値化することができるようです。

 簡単に原理を説明すると、まずセンサー部分には、食べ物に含まれる基本5味を呈する成分の濃度を感知できる18種類のセンサーがついています。これで味成分の濃度を感知します。ただし味の強さの出力に際しては、単に濃度の強さを算出するのではなく、濃度と人の官能評価を照らし合わせた統計データを学習させています。つまり、今流行りの人工知能の一種です。これによって、実際に舌で感じられる強さとして、食べ物の味の強さが数値化されるのだそうです。

 ちょっとややこしくなりましたが、この味覚センサー「レオ」で測定すれば、甘味や苦味の強さの違いとして、チョコレートの味の違いが見れるかもしれないのです。さっそく測定してみましょう!

 結果はこちらです。

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 テンパリングをした方が、甘味が0.1ポイント以上強くなり、酸味が0.1ポイント以上弱くなりました!

 AISSY株式会社では、レオの数値の有意差について、
・0.2ポイント以上の差は、95%の人が違いを認識できる差
・0.1ポイント以上0.2ポイント未満の差は、65%の人が違いを認識できる差
とされています。

 これはつまり、あなたのカレピッピや好きな人がもし「65%の人」であれば、テンパリングの有無による味の違いがバレバレかもしれないということです…!ヒィ!

 今回は口どけや食感のようなものは考慮されていないため、味の違いの全てを数値化しているわけではありません。しかし、少なくとも味覚レベルでは、味に違いが見られることがお伝えできたかと思います。

結晶構造_透明

 チョコレートは温度や冷却の仕方によって、結晶が(大まかに)上記のように6つの型に変化すると言われています。この詳しい説明はまた別の記事に譲りますが、舌にチョコの分子が触れるときの物理的な違いや、それによるカカオの香りの立ち上り方なども、実感としての味の違いに大きく影響していることでしょう。

 少し手間かもしれませんが、今年のバレンタインぜひ、テンパリングありのチョコ作り挑戦されてみてはいかがでしょうか!

 もっと味覚センサーのことが知りたい方は『味博士の研究所』をお読みください!

執筆:大嶋絵理奈(Facebookでフォロー

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Cooperator

IMG_9307 (1) 鈴木隆一

 鈴木隆一(すずき・りゅういち)。通称「味博士」。AISSY株式会社代表取締役社長 兼 慶応義塾大学共同研究員。味覚を数値化できる味覚センサー「レオ」を慶大と共同開発。味覚の受託分析や食べ物の相性研究を実施。メディアにも多数出演。主な書籍は『日本人の味覚は世界一』(廣済堂出版)など。

◎ブログ:味博士の研究所
◎Twitter:@ajihakase
◎Facebookページ:味博士

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