料理のマンネリ化に新しい風を吹かす発想法「料理の四面体」とは
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 料理やお菓子作りの多くは、「作りたいものを決める→レシピを探す→レシピ通りに材料を揃えて作る」という流れで進めていく。しかし、時間が限られた中で、作りたいものごとに毎度このプロセスを経由するのは、時に面倒に思えることもあるだろう。かといって、料理やお菓子作りが大の趣味という人でもない限り、レシピなしで即興で新しいメニューを作ることも難しい。気づけばレパートリーは限られ、同じようなものしか作れないことに気づく…なんて状態に陥るかもしれない。

 レシピから探すプロセスなしに、新しい料理やお菓子を生み出すにはどうしたらよいのだろうか。その答えの一つが、「料理の四面体」という考え方だ。

すべての料理は4つの要素で成り立っている?

 世界中には様々な食べ物がある。しかし、エッセイスト・画家として世界で様々な料理を口にした玉村豊男さんから見れば、あらゆる食べ物はすべて4つの要素で示せるという。

 その4要素とは、火・空気・水・油。玉村さんによれば、すべての食べ物は、この4点から成り立つ四面体の上に位置しているのだそうだ。これが「料理の四面体」である。

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 考え方としては、まず、世の中の食べ物を「火が通っている」「火が通っていない」に分ける。その上で、「火が通っている」であれば、火の熱が、「空気」「水」「油」のうち、どれをどの程度介して通されているかで分けられる。また、「火が通ってない」であれば、食材が空気中にあるか、水分に浸されているか、油分に浸されているかで分けられる。

 このことを料理になじみのある言葉で表現すると、すなわち、次の図のようになる。

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(玉村豊男『料理の四面体』(中央公論新社)p232を元に作成)

パンを料理の四面体に当てはめると…

 と言われても、実際この料理の四面体をどのように使えばいいか、まだしっくりこないかもしれない。次は、実際の例に当てはめて考えてみよう。

 たとえば、ご飯にもおやつにもなる、食パンを例にとってみよう。食パンの時点では、空気の点に位置している。これをトースターで焼いた場合、これは空気を介して熱されるので、空気と火を結ぶ線分の火側に移っていき「トースト」が出来上がる。一方で、フライパンで焼いた場合、トースターよりも火の影響が直にくるので、より火側に近い「ラスク」になる。また、食パンを卵液に浸せば、水の点に位置し、一晩浸したあとにこれを焼けば水と火を結ぶ線分の火側に移動して、「フレンチトースト」になる。はたまた、食パンをオリーブオイルにつけて食べる時、そのひとかけらは油の点に位置し、オリーブオイルを熱した中で揚げれば、油と火の線分の上に位置する「揚げパン」ができあがるかもしれない。

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 このように、食パンを使った一般的なメニューもこの四面体に位置付けることで、レパートリーになかった発想が生まれてくるかもしれないのだ。たとえば、ラスクをもう少し水側に寄せるために液体に浸してみる、フレンチトーストを油側に寄せるためにさらに揚げてみるなど、アレンジを視覚的にイメージできるのだ。自分が作るメニューがどこに位置しているかを考え、それを基準にして四面体の位置を変える工夫をしてみるだけで、簡単に新しい料理やお菓子のアイデアを考えることができそうだ。

 フランスの物理化学者エルヴェ・ティスが提唱した「料理の式」にも見られるように、多様な食材や料理をこのように最小単位で記述する試みが増えている。この「料理の四面体」は、その先駆け的存在ともいえるだろう。いずれの方法においても物事の本質を抽出することは、まだ見ぬ食への探求を推し進めてくれることかと思われる。料理の四面体が、マンネリ化した手料理のスパイスになりますように。

 玉村さんがどのような経緯でこのような発想に至ったのか、もっと知りたい人は、玉村豊男『料理の四面体』(中央公論新社)をご参照いただければ幸いである。

 本稿の執筆にあたり、原稿のご校閲にご協力くださった玉村豊男様に深く御礼申し上げます。

執筆:大嶋絵理奈(Facebookでフォロー

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