食材がキラキラ光る!「光を反射する寒天」が開発された
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 SNSにおけるお菓子写真の投稿は、無条件でハッピー感を醸し出してくる。さらには撮り方がちょっとでも上手いと、それは途端にリア充感やパリピ感なるものに昇華し、非リア非パリピヲタ寄りな我々の自動思考は、”相対性敗北感”なる幻覚を生じさせる。

 このように、お菓子の「キラキラ感」は実に罪深い。それでも、このキラキラ感は、感性レベルのメタフォリカルなオノマトペに過ぎなかった。しかしである。お菓子そのものが、本当に”光って”しまったらどうだろうか。

 「光るお菓子」の誕生は、もう目の前に迫っているようだ。

世界初の「光る寒天」が作られた

 群馬大学理工学部の奥寛雅准教授の研究室で、それは開発された。その名も、「食べられる再帰性反射材」である。サイキセイハンシャザイという言葉に慣れ親しんでいる人はほとんどいないであろうが、きっと誰もが目にしたことがある。

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(写真:http://www.t-kobisha.co.jp/より)

 たとえば、道路標識。自らが発光するわけでもないのに、夜道を車で走行しているときでも、明るく見える。これは道路標識の表面が、自動車のライトの光を、そのまんま自動車側に反射させる性質を持っているからである。同様の性質は、工事現場の警備員さんの作業服などにも見られる。

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 このように、どこから光を当てても、光を当ててきた側にオウム返しをするかのごとく光を反射するのが、再帰性反射材なのである。

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 奥研究室では、寒天を使って、「食べることができる再帰性反射材」作ることに成功した。奥先生によれば、「我々の知る限り世界初」なのだという。

材料はいたって身近な食材

 この寒天は、光が当たると、待ってましたとばかりにキラーンと光る(写真中央)。両隣の対象と比べて、その差は歴然であろう。

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 暗闇の中で光が射した時はもちろんのこと、明るいところでも光る。太陽の光で光る月のような存在である。

 材料は、寒天、水飴、砂糖、水。サイキセイハンシャザイというイカツイ肩書きがついてる割には、添加物などもなく、安心して食べられそうだ。最初はコンニャクや人工イクラの皮の成分でテストを行うなど、数多の試行錯誤を重ねられた結果、シンプルかつベストな配合の発見に至ったようだ。

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 もう一つポイントがある。それは、この型である。型は、「コーナーキューブ」と呼ばれる形状の溝が集まっている。この形状が、光を一点に集め、来た方向に返すために役立っている。”光る寒天”を作るときは、これを型にして作るそうだ。

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 そして、実際食べてみると、とにかく甘い。砂糖の優しい甘味が口中を支配する。これは、反射する光の量を変えないように、砂糖を多く加えて寒天の透明度を上げるためであるようだ。今後甘味料を工夫していくことで、”甘すぎ問題”は解決していくのだという。

 

 開発を行った宇治貴大さんによれば、この寒天をケーキに飾ることで、ケーキ表面にキラキラを付加させるだけでなく、プロジェクションマッピングのマーカーなって、誕生祝いや結婚式の場でケーキに映像を映し出すことができるようだ。こうした様子がInstagramのフィードで流れてこようものなら、既存のお菓子写真が持つキラキラ感をはるかに凌駕するキラキラ感に誰もが打ちのめされることだろう。それほど、お菓子のキラキラ感を強固にするツールになりうるのである。他にも、胃カメラや内視鏡検査を行う際の、体に無害なマーカーになるなど、医療現場での応用も検討されているようだ。

  現在は、これ以下のサイズの寒天を作るのはまだ難しいようだが、作成方法をさらに工夫していくことで、輝きを放つお菓子や、さらにエンターテイメントの高いお菓子が誕生していくことだろう。この研究は、今年3月2日に行われた、情報処理学会主催のシンポジウム「インタラクション2017」で、「インタラクティブ発表賞(PC推薦)」と「インタラクティブ発表賞(一般投票)」をダブル受賞するなど、高い注目が集まっている。”SNSにおいて特定の輝度以上の写真を含む投稿を表示しないAPI”なんかを開発して心の防衛はちゃっかり行いつつも、今後の研究の発展が楽しみだ。

 本原稿の執筆にあたり、取材にご協力くださった群馬大学理工学部の宇治貴大様、原稿のご校閲にご協力くださった奥寛雅先生に深く御礼申し上げます。

執筆:大嶋絵理奈(Facebookでフォロー

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奥寛雅

 奥寛雅(おく・ひろまさ)。群馬大学大学院理工学府・理工学部にて准教授を務める。専門分野はダイナミックイメージコントロール、光学デバイス、高速画像処理。画像処理と光学デバイスを融合した次世代のメディアテクノロジー創出を目指す。特に、動的な現実世界に対応した画像・映像の新しい利用方法にまつわる研究を行っている。

◎奥研究室公式ページ: http://www.okulab.cs.gunma-u.ac.jp/
◎奥研究室公式YouTubeチャンネル:https://www.youtube.com/channel/UC7vJ6ckgT_bnXzKTnWMGuPQ
◎主な業績(2017年3月時点)
2016年 日本ロボット学会 Advanced Robotics Best Paper Award
2015年 経済産業省,デジタルコンテンツ協会 Innovative Technologies 2015 採択(るみぺん2)
2015年 日本バーチャルリアリティ学会論文賞
2014年 計測自動制御学会論文賞・蓮沼賞,同計測部門論文賞
2013年 経済産業省,デジタルコンテンツ協会 Innovative Technologies 2013 採択(1ms オートパン・チルト),特別賞 (Industry)
2013年, 2010年 日本ロボット学会誌論文賞

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