パウダーつきのお菓子がおいしい理由を科学的に考察
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 ハッピーパウダーでおなじみの「ハッピーターン」や、すっぱいパウダーが刺激的な「ピュレグミ」などのパウダーがついたお菓子は、パウダーがあるからこそ、他とは違うおいしさがあるような気がしないだろうか。パウダーつきのお菓子は、なぜ私たちを虜にするのだろうか。味を感じるしくみに注目して、その理由を考えてみたい。

舌で味を感じるしくみ

 おいしさのスタート地点は、言うまでもなく「味を感じること」である。舌の上には、「味蕾」という器官があり、食べ物の味(味覚)はこの味蕾で感知されている。人の味覚は甘味、旨味、塩味、酸味、苦味の5つである。

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 味蕾を拡大してみると、味細胞が集まって、末端で神経繊維につながった状態で存在していることがわかる。味細胞の先端には「味覚受容体」と呼ばれるセンサーがついている。この味覚受容体にはいくつか種類があり、5つの味それぞれを感知することができる。味物質がこの受容体に結合し、その情報が神経を介して脳にまで届くと、私たちは「甘い」「酸っぱい」といった味を感じることができる。

 味物質には多くの種類がある。たとえば、甘味物質であれば砂糖に含まれるグルコース、旨味物質であれば昆布だしに含まれるグルタミン酸ナトリウムなどだ。これらの物質は、受容体に届く量が多いほど、強い味を感じられるようになる。

おいしさの秘密は粒子の大きさにアリ?

 ただ、いずれの物質も、着実に受容体に届くためには、唾液の中に溶け込む必要がある。アメなどの口中で溶かすことを前提としているものは別として、多くの食べ物は、噛まない時より噛んだ時の方が味が強く感じられるだろう。これは、噛むことによって食品の構造が壊れて、味物質が唾液の中に溶け込むことで、味物質が味蕾に届くようになるからだ。食品の大きさは、唾液への溶けやすさを決め、味の知覚に影響を与える。

 ここで、本題のパウダーについて考えてみよう。パウダーは、小さな粒子である。一般的に、固体が液体中に溶けるときの速度は「Nernst-Noyes-Whitneyの式」が成り立つことが知られている。

 

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(C=濃度, t=時間, D=拡散係数, S=個体の表面積, V=溶液の体積, δ=拡散層の厚さ, Cs=溶解度)

 細かいことは抜きに、この式を使って言いたいのは一つである。同じ成分で同じ体積の食べ物が、粒子の小さなパウダー状になっている場合と、粒子の大きな固形物になっている場合では、パウダーの方が、粒子あたりの表面積(比表面積)が大きくなる。すると、粒子の大きなものと比べて、右側のSの部分が大きくなるので、溶ける速度が上がる。溶ける速度が早いと、味物質が味蕾に行き渡るのが早くなる。体感としては、口に含んだだけで味が感じられるようなスピード感だ。

 ハッピーターンやピュレグミのようなお菓子では、噛み始める前に、パウダーの味が口中に行き渡った状態で噛み始めることで、パウダーの味が溶けた中でさらに固形部分の味が染み出てくることになる。こうした2段階の味の出現が、おいしさと関係しているのではないだろうか。焼肉を作る時、タレをあらかじめ染み込ませて焼くより、焼いた肉にタレをつける方がおいしい気がするのと似ているかもしれない。

 もちろん、お菓子のパウダーそのものが工夫された味であることが前提ではあるが、パウダーは口中で「調味液」のような役割を果たすことが、パウダーつき菓子のおいしさの一因なのではないだろうか。これはあくまで筆者の仮説に過ぎないので、あなたのお考えもぜひ聞かせて欲しい。

執筆:大嶋絵理奈(Facebookでフォロー

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