「科学的に相性の良い食べ合わせ」はどこまで解明されている?フードペアリングの科学。
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 赤ワインにはお肉、白ワインには魚、チョコレートには抹茶味、ホワイトチョコレートにはさくら味…などなど。人により好みの違いはあれど、多くの人が「相性が良い」と感じる食べ物の組み合わせは、確かにあるようです。相性の良い食べ物と悪い食べ物は、一体何が違うのでしょうか。科学でどこまでその謎が解けているのでしょうか。今月Publishされたばかりの、食心理学者Charles Spence博士の文献を元に、食べ合わせ(フードペアリング)の科学研究を追ってみましょう!

◎食べ合わせの良し悪しは化学物質が決める!説

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 赤ワインにお肉が合う一方で、赤ワインとホタテなどのシーフードを食べ合わせると、鉄のような金属味や、不快な魚くさい味がすることが経験的に知られていました。後の研究で、これは赤ワイン中の鉄イオン濃度や、赤ワインとホタテの成分が組み合わさってできる揮発性の物質に由来することが分かりました。
 また、歯を磨いた後にオレンジジュースを飲むと(このシチュエーションは謎ですが!)、オレンジジュースの甘味があまり感じられないことも知られています。これは、歯磨き粉中に含まれるラウリル酸ナトリウムという物質が、舌にある甘味を感知するセンサー(甘味受容体)の働きを抑えるためです。

 このように、食べ合わせの良し悪しは、食品中の化学物質そのものの味や、舌のセンサーへの作用によって決まる、すなわち「化学物質によって決まる」という説が、長年唱えられてました。また、「同じ化学物質を含む同士の相性が良い」という仮説が有力でした。

計算で食べ合わせの良い食材が見つかる!説

network(画像:Network analysis and data mining in food science: the emergence of computational gastronomyより)

 今の時代は、コンピュータなしでは成り立ちません。それほど、至る分野で「計算科学」が導入されています。食べ合わせにおいても、計算で導き出せるという仮説が唱えられています。様々な食品中に含まれる化学物質について、データマイニングの技術を取り入れることで、相性の良い組み合わせを探し出すというのです。これは、先の「同じ化学物質を含む同士の相性が良い」という仮説に基づいています。
 計算によって、「アミン」という物質を共有するホワイトチョコレートとキャビア、「インドール」という物質を共有する豚の肝臓とジャスミンなど、これまでに人が見つけられなかった相性の良い組み合わせが発見されました。

 しかし、実験を進めていく中で、コンピュータで導き出された「同じ物質を共有する同士」より、「違う物質を持ち合わせる同士」のほうが美味しいと感じる実験結果が出てくるなど、話はそう簡単ではないことが明らかになってきました。

文化・遺伝要素・認知のしくみを考慮しようぜ!説(←今ココ)

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 似たもの同士より違うもの同士の方が美味しいと感じられる要因の1つに、食文化の違いがあります。西洋の料理では、同じ物質を含むもの同士が合わさっていることが多いのに対し、インド料理では、全く性質の違うスパイスを意図的に組み合わせるなど、違う物質を含むもの同士が積極的に合わせられています。食べ物の好みはその人の食経験に左右されるため、こうした食文化の違いが美味しさを左右しるうのです。
 また、化学物質で全てを決めようとする説では、機械としてのヒトが考慮されていませんでした。化学物質を感知するのは、人の味覚や嗅覚、体性感覚などです。これらの感覚は、神経の数や感覚を刺激する強度(閾値)などが遺伝的に人それぞれです。このような「情報を入力される側の特性」も考慮すべきだという意見が出てきたのです。
 ただし、人の認知や脳には共通するクセがあります。例えば、バニラシナモンアイスを食べる直前に、バニラの香りを嗅いでから食べると、シナモンの味が強く認知されます。逆もまたしかりです。しかし、香りを嗅ぐタイミングと食べるタイミングに間が空いていれば、そのような現象は起こりません。つまり、脳は勝手に情報を統合したり分けたりするので、五感刺激の入力タイミング次第で、味の認知の仕方が人々に共通する形で変わりうるのです。

 こうした、文化的背景の違いや、遺伝要素、人の認知のメカニズムを含めて食べ合わせを論じるべきだというのが、最近の流れであるようです。今まで述べたことを含め、現在では「似たもの同士」「対照的なもの同士」「組み合わさることで新しい味が出現する同士」が相性が良いと考えられているようです。

 Charles博士は「食べる順番(時間的な順序)」に注目しています。例えば、お寿司は、ネタを下側にして醤油をつけ、ネタが舌に触れるような形で口に含みます。また、裏か表のどちらかにチョコレートがコーティングされているビスケットを食べる時、チョコレートの面が舌に触れるように口に含むことが多いのではないでしょうか。こうした食べ方が好まれるのは、舌に触れる順番が味に影響するためではないか推測されています。フードペアリングの研究はまだまだ奥が深そうですね。

執筆:大嶋絵理奈(Facebookでフォロー

参考文献
Pairing flavours and the temporal order of tasting

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