フードペアリング理論──「科学的に相性の良い食べ合わせ」はどこまで解明されているか
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 赤ワインに肉、白ワインに魚など、人により好みの違いはあれど、多くの人が「相性が良い」と感じる食べ物の組み合わせがある。相性の良い食べ物と悪い食べ物は、いったい何が違うのだろうか。食べ物の相性について、科学でどこまでその謎が解けているのだろうか。食べ合わせ(フードペアリング)の科学研究の動向を追ってみよう。

仮説1:食べ合わせの良し悪しは化学物質が決める

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 食べ物の相性の良し悪しは化学物質によって決まるという説が、長年唱えられてきた。つまり、食品中の化学物質そのものの味や、味を感じる舌のセンサーへの作用によって、相性が決まるということだ。

 たとえば、赤ワインに肉が合う一方で、赤ワインとホタテなどのシーフードを食べ合わせると、鉄のような金属味や、不快な魚くさい味がする。これは、赤ワイン中の鉄イオンや、赤ワインとホタテの成分が組み合わさってできる揮発性の物質のせいであることが分かっている。

 また、歯を磨いた後にオレンジジュースを飲むと(このシチュエーションは謎だが)、オレンジジュースの甘味があまり感じられないことも知られている。これは、歯磨き粉中に含まれるラウリル酸ナトリウムという物質が、舌にある甘味を感知するセンサー(甘味受容体)の働きを抑えるためだ。

仮説2:食べ合わせの良い食材は計算できる

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(画像:Network analysis and data mining in food science: the emergence of computational gastronomyより)

 化学物質が食べ合わせを決めるという説では、「同じ化学物質を持っている同士」が相性が良いとされてきた。そこで、さまざまな食材に含まれる化学物質のデータを集めれば、コンピュータを使って相性の良い食べ合わせを自動的に探し出せるのではないかと考える研究者が現れ始めた。

 実際に、計算によって、「アミン」という物質を共有するホワイトチョコレートとキャビア、「インドール」という物質を共有する豚の肝臓とジャスミンなど、これまでに人が見つけられなかった相性の良い組み合わせが発見された。
 
 しかし、実験を進めていく中で、コンピュータで導き出された「同じ物質を共有する同士」より、「違う物質を持ち合わせる同士」のほうが美味しいと感じる実験結果が出てくるなど、話はそう簡単ではないことが明らかになってきた。

仮説3:文化・遺伝・認知メカニズムも相性に影響(←今ココ)

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 似たもの同士より違うもの同士の方が美味しいと感じられる要因の1つに、食文化の違いがある。西洋の料理では、同じ物質を含むもの同士が合わさっていることが多い。それに対し、インド料理では、全く性質の違うスパイスを意図的に組み合わせるなど、違う物質を含むもの同士が積極的に合わせられている。食べ物の好みは個人の食経験に左右されるため、こうした食文化の違いがおいしさの感じ方を変えるのだ。

 また、化学物質で全てを決めようとする説では、人の体の個人差が考慮されていなかった。味覚や嗅覚の情報を脳に伝える神経の数や、感覚を刺激する強度は、遺伝的に人によって異なる。人の体、つまり「味の情報を入力される側の特性」を考慮すべきだという意見が出てくるようになった。


 ただし、人の認知や脳には共通するクセがある。例えば、バニラシナモンアイスを食べる直前に、バニラの香りを嗅いでから食べると、シナモンの味が強く認知される。しかし、香りを嗅ぐタイミングと食べるタイミングに間が空いていれば、そのような現象は起こらない。五感刺激の入力タイミング次第で、味の認知の仕方が変わるのは、人々に共通する現象であるようだ。

 こうした、文化的背景の違いや、遺伝要素、人の認知のメカニズムを含めて食べ合わせを論じるべきだというのが、最近の流れであるようだ。今まで述べたことを含め、現在では「似たもの同士」「対照的なもの同士」「組み合わさることで新しい味が出現する同士」が相性が良いと考えられている。

 食心理学者のCharles Spence博士は「食べる順番(時間的な順序)」に注目している。例えば、お寿司は、ネタを下側にして醤油をつけ、ネタが舌に触れるような形で口に含む。また、裏か表のどちらかにチョコレートがコーティングされているビスケットを食べる時、チョコレートの面が舌に触れるように口に含むことが多い。こうした食べ方が好まれるのは、舌に触れる順番が味に影響するためではないか推測されている。フードペアリングの研究はまだまだ奥が深そうだ。

執筆:大嶋絵理奈(Facebookでフォロー

参考文献
Pairing flavours and the temporal order of tasting

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