分子調理ってどんな料理?5つの基本のテクニック
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 食材や調理のプロセスを分子レベルで捉え、新たな美味しさを追求する「分子調理」。分子調理は「科学を使った調理である」と漠然とわかるものの、実際はどんなことを行っているのだろうか。分子調理で使われている代表的なテクニックを紹介する。

◎瞬間凍結

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(写真:http://www.molecularrecipes.com/より)

 白い煙がモワモワと立ち上がるような派手な見た目で有名なのが、「液体窒素」による瞬間凍結だ。窒素は、私たちが普段吸い込んでいる空気の8割を構成しているように、常温では気体である。しかし、マイナス196℃よりも低温になると液体になる。この液体窒素の中に食材を入れると、食材を一瞬にして凍らせることができるのだ。

 冷凍庫などで食材を凍らせる場合は、時間がかかるかつ、氷の結晶が大きくなって細胞が破壊されたりすることで、食品の品質が変化する。一方、瞬間凍結では、氷の結晶が大きくなるヒマがない。ゆえに、そのままの形状で、風味や食感を変えることなく凍らせることができるのだ。液体窒素は、他の温度が低い液体(液体ヘリウム、液体酸素など)よりも安価であり、取り扱いも比較的楽であることから、よく利用されている。

◎泡化

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(写真:http://www.molecularrecipes.com/より)

 また、分子調理といえば「エスプーマ」を想像する人もいるかもしれない。エスプーマとは、分子調理をいち早く取り入れたスペインの世界的レストラン「エル・ブジ」の料理長が開発した器具である。この器具を使うと、あらゆるものを泡状(ムース状)にすることができる。

 器具は細長い容器に、噴出口とガスの注入口がついている。食材をペースト状にして、卵白やゼラチンのような凝固剤とともに入れる。それを、「亜酸化窒素」というガスとともによく混ぜることで、ペースト全体を泡立た状態で噴出することができる。炭酸飲料などに含まれる二酸化炭素を使うことでも泡立てることは可能だが、苦味やピリピリとした感じもおまけで付いてきてしまう。しかし、亜酸化窒素では、味や風味に影響を与えることなく泡立てることができるのだ。

◎球化

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 「人工いくら」として市民権を得ている、”液体を薄い膜で包んで球体にする”という方法も、分子調理の技法の一つである。「アルギン酸ナトリウム」という、海藻などに含まれるヌメヌメ成分である物質を、ジュースなど球にしたい液体の中に溶かす。それを、「乳酸カルシウム」と呼ばれる物質の溶けた水の中に入れると、ジュースが球体になる。

 アルギン酸ナトリウムは、「L-グルロン酸」と「D-マンヌロン酸」と呼ばれる2種類の糖が長く連なって出来ており、ジグザグした鎖形になっている。アルギン酸ナトリウムがカルシウムに出会うと、ナトリウムが結合していた部分がカルシウムに置き換わる。さらに、1分子のナトリウムは1つの分子としか結びつかないが、1分子のカルシウムは2つの分子と結びつくことができるので、カルシウムを介してアルギン酸カルシウム同士が結びつきはじめる。これが膜の正体である。こうしてできた球体は熱にも強く、少し温めたぐらいでは溶けない。

◎ゲル化

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(写真:http://www.molecularrecipes.com/より)

 ゲルといえば、ゼラチンや寒天を使って、ゼリーやプリンを作るのは一般的だ。分子調理では、他にも「アガー」「カラギーナン」「ゲランガム」といったゲル化剤を使って、硬さや透明度が異なるさまざまなゲルを作る試みをしている。

 これらは、「多糖類」と呼ばれる種類の物質で、アルギン酸ナトリウムと同様に、糖が細長く連なり、絡み合うような構造をしている。ゲル化したい液体を温めてゲル化剤を溶かすと、ゲル化剤の糖の鎖のすきまに液体が入り込んだような状態になる。そこから温度が下がると、すきまに液体を含んだまま、鎖同士が水素結合などによって相互に結びつきはじめる。こうしてプルプルとした、液体でも固体でもない食感ができあがるのだ。注射器と細長いチューブを使えば、細長いひも状のゲルを作ることもできる。

◎接着

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(写真:https://www.youtube.com/ より)

 最後に紹介するのは、タンパク質を含む食べ物を接着剤のようにくっつけてしまう技術である。タンパク質は20種類のアミノ酸でできている。このうち「グルタミン酸」と「リジン」という2種類のアミノ酸同士を結びつける働きを持つのが「トランスグルタミナーゼ」という酵素だ。

 この酵素は人の体の中にも含まれている(筋肉同士を接着させるためではなく、出血を止めたり皮膚を丈夫にするのに役立っているそうだ)。トランスグルタミナーゼを使えば、細切れの肉をステーキ肉のような塊にしたり、牛豚鳥の混合肉を作ったりできる。もちろん、魚介類にも使える。細長い麺状にすれば、小麦粉以外から麺を作ることもできるようだ。

 分子調理のテクニックは他にもいくつかある。こうした化学を駆使した調理テクニックによって、料理で新たな表現や味わいを生み出すのが分子調理の世界である。日常ではなかなか食べる機会はないが、今後も科学で料理を進化させる第一線の分野であり続けることだろう。

執筆:大嶋絵理奈(Facebookでフォロー

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