未来のスーパーフード?「昆虫食」を体験してみた
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 一般的に、食べ物に昆虫が入っていようものなら、ニュースになり、製造が停止するような問題にさえ発展することがあります。しかし、一方で昆虫は、食糧源としてその価値が見直され始めています。世界一のレストランに選ばれた「NOMA」のシェフが立ち上げた、デンマークの食品研究所「Nordic Food Lab」も今年、昆虫食本『On Eating Insects』を出版しました。
 食品会社としてタブーなのかもしれませんが!このメディアは食の進化がテーマです。この記事では、最先端の食材とも言える昆虫食を紹介してみます。

昆虫食が注目される理由

◎昆虫は栄養価が高い

 まず、昆虫は栄養成分が豊富です。たとえば卵は、その約52%がタンパク質で、約43%が脂質と、優れた栄養源です。実は昆虫も、卵と同じ量に置き換えたとき、同じぐらいのタンパク質・脂質を摂取できます。もちろん昆虫の種類によって異なりますが、たとえばカイコは、その約63%がタンパク質、約30%が脂質と、卵に近い組成をしています。

 また、タンパク質を構成するアミノ酸や、脂質の種類も優れている昆虫が多いようです。アミノ酸には20種類ありますが、そのうち体内で合成できないものは「必須アミノ酸」と呼ばれます。昆虫にはこの必須アミノ酸が多く含まれているという報告があります。また、脂質には、一般にコレステロールや中性脂肪を増やすと言われる「飽和脂肪酸」と、コレステロールを減らすと言われる「不飽和脂肪酸」があります。昆虫には、不飽和脂肪酸の割合が高いと言います。他にも、昆虫を食べることは、その小さな体を動かすのに必要な成分を全て食べることになりますので、ビタミンやミネラル分も摂ることができます。

◎来たる食糧難にも対応

 このメディアをお読みいただいてる方は、食べ物に困るような生活はしていないかもしれません。しかし、世界的には、2050年頃には、世界人口の増加と食糧の需給が釣り合わず、食糧不足に陥るとされています。こうした事態においても、昆虫は食糧として重宝します。昆虫は種類が多く、どのような地域にもおり、個体の数も多いです。また、植物や家畜と比べて、生育のスピードも早いです。そして、先に述べたように、普段食べられている食糧に匹敵するほど栄養価が高いのです。昆虫を食材のひとつとして取り入れることができれば、食糧危機に陥っても、生きながらえる人が増えそうです。

 このように、論理的には、昆虫食は良さそうです。しかし、論理と実践には常にギャップが伴うもの。昆虫食のギャップは、大きすぎます。次に、昆虫を食べるとはどのようなことなのか、具体的に見てみましょう。

昆虫食を実際に体験してみた

※この先には昆虫食画像が登場します。苦手な方はご注意ください

 筆者は、部屋に虫が出ようものならパニックに陥る程度には決して昆虫が得意ではありませんが、何事も挑戦です。先週4月22日に神奈川県・関内で行われた「東京虫食いフェスティバルvol.7」に参加して参りました。こちらは、昆虫を当たり前のように食す登壇者によるトークショーを聞きながら、昆虫食料理を食べられるイベントです。

 以下は個人的な感想のような文章となりますが、こちらで食べてきた昆虫食をレポートしてみます。

 当日提供されていた昆虫食メニューは以下の通りです。

menu
昆虫食スイーツもありました。

sweets
 お菓子と科学のウェブメディアであるOPENLAB Reviewとしてはこのスイーツを味わってみたかったのですが、開演直後から長蛇の列で、速攻で売り切れてしまったようで食べられず(残念!)。そこで、以下のものを食べました。

・キイロスズメバチのしゃぶしゃぶ
・バグミックスフライ
・クロスズメバチの虫華まん
・タガメサイダー

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 キイロスズメバチのしゃぶしゃぶは、蜂の巣から直接ピンセットで取り出し、お湯でさっと火を通す。まさにしゃぶしゃぶです。

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 見た目の抵抗感が否めないのですが、勇気を出して口に含むと意外とクリーミーで旨味があり、「確かにおいしい」と納得せざるを得ませんでした。食べ物の味は見た目にも左右されると言いますが、見た目がこれでも「おいしい」と思えるということは、相当味が優良である証拠だと思われます。今回食べた中では一番味が良かったです。

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 次いでバグミックスフライには、コオロギやミールワーム、セミが含まれていました。しゃぶしゃぶが可愛く見えるくらいエグい見た目で震えます。アーモンドやピーナッツが平然と紛れ込んでいるあたりがシュールですね。いずれも外側は硬い食感ですが、「サクサクしてる」といえる程度の硬さです。コオロギはサクラエビのような味で、ミールワームは先のしゃぶしゃぶのようにクリーミーです。セミは見た目とは裏腹に内側は柔らかく濃厚なミソ感があり、確かにナッツと一緒に楽むことは可能だと感じました。

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 クロスズメバチの虫華まんは、ケーキ表面の飾りのチョコのごとくハチが突き刺さっています。中身も、肉の代わりにクロスズメバチと思わしきタンパク源が入っています。少し殺菌用?のアルコール感が強い味わいなのが気になりましたが、肉まんとの相性は悪くないと思いました。もう少し味付けを改良して、「虫入りだよ」と知らされなければ、普通に食べられる方も多いのではないでしょうか。

 最後に、写真を撮り損ねてしまいましたが、タガメサイダーは見た目は普通のサイダーで、これまでのものと比べると圧倒的に安心して飲めました。タガメは洋ナシのような香りがするのだそうですが、虫が入ってるとは思えないくらい、普通に美味しいです。

 どんなに論理を理解し、味の良さを理解しても、やはり心理的な抵抗感は否めないのが正直なところです。しかし、場の空気と好奇心によって「苦手な昆虫を食べることができてしまった」という体験は、なんともいい難い価値観の変容が起きます。認知的不協和を埋めたい心理が働くのか、自己正当化がなされ、昆虫を食べてしまった自分を認めざるを得なくなります。認知行動療法における「エクスポージャー」に近いかもしれません。世界が180度変わるというと大げさですが、それくらい先入観が壊され、自分の何かが変化する貴重な体験と言えます。昆虫を常食したくなるかは別問題ですが、そういう意味でも一度挑戦してみることは十分価値があると感じました。

 この先、日本や海外で昆虫食がどのように普及していくのか、扁桃体に直結するような虫への抵抗感はどのように拭われていくのか、今後の動向にも引き続き注目していきたいと思います。

執筆:大嶋絵理奈(Facebookでフォロー

*参考文献
内山昭一『昆虫食入門』(平凡社新書, 2012年)

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