ウシやニワトリのエサを変えると、卵や牛乳の味はどう変わる?
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 卵や牛乳は、お菓子作りに欠かせない材料です。おいしいお菓子を作るためには、レシピ通りに失敗しないように作ることだけでなく、材料そのものの味の影響も考えなければなりません。お菓子を進化させるためには、原材料の進化も不可欠です。卵や牛乳は、ニワトリやウシが作り出す生モノなので、家畜の種類や育て方までを見直すことで、もっと卵や牛乳を進化させることができるでしょう。
 今回は、その一例として、ニワトリやウシのエサを変えることで、卵や牛乳の質を変化させた事例をご紹介します。

ニワトリの場合

egg

◎ビタミンEとリノレン酸の影響(*1)

 まずは、通常のエサに、脂溶性ビタミンであるビタミンEを0.05%と、体内で合成できない脂肪酸である「リノレン酸」を多く含む植物油をそれぞれ1%加えた場合です。このエサを与えると、卵は通常と比べて、ビタミンEが2倍ほど、リノレン酸が4倍ほど多く含まれるようです。このように栄養の配合が変わるだけでなく、卵黄の性質も変化します。実験では、通常の卵黄よりも粘り気があり、火を通して場合もより凝集して弾力が大きく、油滴が細かくなったようです。こうした性質の卵黄は、生卵として使う場合、すき焼きの卵やクッキーのつやだしなどに向いているといいます。また、乳化性も高いことから、お菓子作りの乳化のプロセスでも活躍しそうです。

◎ミネラル成分の影響(*2)

 次は、ミネラルの影響です。通常のエサに、鉱物を混ぜたもの(石英・トルマリン鉱石、参加カルシウム、貝化石など)を0.1%加えたエサを与えると、卵の中の鉄、カルシウム、マグネシウムなどの量が増えるようです。また、通常の卵よりも卵黄の粘りが大きく、卵黄の膜も硬いという結果もできました。加熱した卵黄と卵白をそれぞれ顕微鏡で観察したところ、通常の卵よりも卵黄の粒が均一に存在しており、卵白の層構造がはっきりしていることもわかりました。この卵を用いて厚焼き卵とゆで卵を作った場合、卵白と卵黄がより硬く、食感が良いとされたそうです。ミネラルを多く含む卵は、卵の食感をより楽しむのに向いているのかもしれません。

ウシの場合

milk

◎ハーブ類の影響(*3)

 乳牛においてもニワトリのように、エサによって牛乳の味が変化します。例えば、通常のエサにハーブのシナモンとバジルを1:1で混ぜたものを0.5%加えた場合です。このエサを食べた牛の乳には、「シンナムアルデヒド」「d-カルボン」といった、シナモンやバジルの中の成分が含まれるようになります。牛の消化管や肺から吸収されたものは、血流によって乳腺まで運ばれ、乳として出るようになると考えられています。こうしたハーブ成分を含む牛乳は、ハーブ成分によって牛乳特有の乳臭さがマスキングされます。ヒトによる官能評価では、ハーブ牛乳は通常の牛乳と比べて「乳臭さがなく、甘く、味のキレがあり、コクがある」という評判だったようです。牛乳臭さが苦手な人に良さそうですね。

◎草の種類による影響(*4)

 ウシに与えられる草の種類は数多くあり、種類によって牛乳の中の成分も変化します。特に、稲の茎・葉・実を発酵させて造られた「稲発酵粗飼料」は、稲わらやチモシーからできたエサと比べて、ビタミンE(α-トコフェロール)を多く含むといいます。また、イタリアングラスやトウモロコシからできたエサを使った場合は、稲わらからできたエサの場合と比べて、「βカロテン」という成分が多く含まれます。このことを確かめた実験は牛を短期間育てたものなので、長期間育てた時にも同じことが起こるかは定かではありません。しかし、今後は、このようなビタミンやミネラル成分を多く含む、より栄養機能の高い牛乳が増えていくと思われます。

 他にも、多くの業者さんが独自のエサを研究開発して、卵や牛乳の味を進化させていることかと思います。いつもは卵や牛乳の違いを気にすることがなかった方も、作り手のこだわりに注目してみると新しい発見があるかもしれません。

執筆:大嶋絵理奈(Facebookでフォロー

参考文献

*1 異なる飼料を給与した鶏が産卵した卵の調理特性
*2 異なる飼料を給与した鶏が産卵した卵の調理特性(第2報)
*3 ホルスタイン種乳牛のハーブ給与による牛乳中へのハーブ精油成分の移行と風味の変化
*4 稲発酵粗飼料給与が生乳中のα-トコフェロール濃度に及ぼす影響

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