シズるを左右する?食欲がわく照明・わかない照明
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 同じ料理を撮影しているにも関わらず、おいしそうに見える写真と、そうでない写真がある。こうした違いを生む理由の一つは、料理を照らす光だ。照明は、食品の魅力を大きく左右する。これは写真のみならず、店頭でも同じである。どんなに味がおいしいものでも、照明一つで食べることに抵抗感がでるほどに印象が悪くなることもありうる。照明が食欲にもたらす影響を見てみよう。

世界は脳に補正されている

 突然だが、次の画像を見て欲しい。部屋の中に、二人の人物が立っている。

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 この部屋にいる二人の大きさは、おおよそ同じような大きさに感じられないだろうか。

enkin2

 しかし、後ろの人物を手前に配置してみると、実際はまるで親子のようにサイズが違う。そして、このことを理解した今でも、1枚目の大きさの違いを、2枚目と同じように感じるのは難しいだろう。これは、部屋の奥行きを考慮して、脳が自動的に視覚情報を補正するためである。

 では、次はこちらのショートケーキの写真を見て欲しい。

sam2(1)

 よくあるショートケーキのように、イチゴは赤色に、種の部分は黒色に、スポンジの部分は薄い黄色に、クリーム部分は白色に感じられるのではないだろうか。

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 しかし、実際イチゴの色は茶とオレンジの中間のような色であり、種の部分も抹茶のような渋い緑色だ。そうと分かってもなお、1枚目のイチゴを意図的にオレンジや緑だと感じる方が難しいだろう。緑がかった光の色合いを考慮して、脳が色情報を補正してしまうためである。世界の見方を変えるのは難しいのだ。

 このように、目に見える情報は脳で自動的に補正される。これを「恒常性」と呼ぶ。この恒常性によって、どのような照明の下においても、白米は白米であると感じられる。白米は白いものだと学習された経験が、脳に補正を行わせるのである。

 しかし、恒常性があってもごまかせないことがある。我々の食欲だ。たとえ恒常性によって、赤い照明の下でも白米が白く感じられるとしても、食欲まではごまかせないようだ。

食欲までは補正できないらしい

 東京都市大学(論文投稿時は武蔵工業大学)の小林茂雄教授は、濃淡の異なる色付き照明を用意して、20種類の料理を照らし、その印象を調べる実験を行った。

 実験は、カフェを想定した、椅子とテーブルが設置されたスペースで行われた。照明の色は赤、緑、青の3種類で、それぞれ濃淡が2種類の、全6種類の照明が使われた。3-4人の参加者が、友人同士で来店した設定で着席し、その後照明が6種類のいずれかに変えられた。その照明の色に5分間目に馴染ませた後で、料理が提供された。その料理について参加者は、見た目だけの判断で「抵抗なく食べられる」「抵抗はあるが食べられる」「食べられない」のいずれかで評価した。その結果、以下のような傾向があることがわかった。

1)淡い色はセーフ、濃い色はアウト

 たとえば白米では、淡い光の時は、赤、緑、青のいずれの場合でも、80〜100%の人が「抵抗なく食べられる」と回答した。しかし、濃い光になると、緑と青では32%に低下した。また、トマトの場合は、淡い光の場合は74〜92%の人が「抵抗なく食べられる」と回答した一方で、濃い青の場合は12%、濃い緑に至っては0%に低下した。色の濃い緑や青の照明は、カビっぽさや品質低下のイメージを想起させ、食欲を低下させるようだ。

2)デザートのストライクゾーンは広い

 20種類の中で、デザート類(プリン、クッキー、ショートケーキ、みたらし団子、ヨーグルト)は、濃い光の場合でも比較的食欲が維持されたままであった。特にクッキーの場合は、いずれの濃い光でも、72〜100%の人が「抵抗なく食べられる」と評価した。この理由として、デザートは着色料が使われる機会が多いため、光によって見た目の色が変わったとしても、そういう色のデザートなのだとして受け入れやすいことが挙げられている。

3)食品の温度との一致感も大事

 白米では、濃い緑と青では評価が著しく下がったのに対し、濃い赤では88%の人が「抵抗なく食べられる」と判断した。一方で、牛乳では、濃い赤と濃い緑で「抵抗なく食べられる」を選んだ人は28〜32%だったのに対し、濃い青では64%であった。このことは、白米は温かいものであり、牛乳は冷たいものであるという前提が関係していると考えられている。温かくあるべきものは暖色である赤色を受け入れやすく、冷たくあるべきものは寒色である青色を受け入れやすくなるのである。

 他にも、ツヤのあるものは光の色で鮮度や見た目の感じ方に影響が出やすいことや、コーヒーなど元々の色が濃いものは光の色で印象が左右されにくいことが明らかになった。このように、いくら脳が見える世界を補正したとしても、食欲自体は、物理的な視覚情報(光の波長など)に左右されるようだ。食べ物の写真を編集するときや、店頭に並べるときには、食欲が落ちるような見た目にならないように注意したい。

執筆:大嶋絵理奈(Facebookでフォロー

参考文献
鮮やかな光色で照明された食品に対する食欲

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