夏の暑さによって牛乳の質は変化する(研究結果)
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 蒸し暑い日が続くようになり、早くもバテ気味な方もいるのではないだろうか。人と同じように、牛も暑いとバテる。牛がバテ始めると、私たちが飲んでいる牛乳にも影響が出始める。実は、夏の牛乳は、味がわずかに変わっているのにお気づきだろうか。蒸し暑い環境が、牛乳の質にどのような変化を及ぼすのかに迫ってみよう。

夏の牛乳はさっぱりしている?

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◎そもそも乳の量自体が減る

 私たちはいつでも牛乳を買うことができるが、牛はいつでも同じペースで乳を出すわけではない。

 牛(ホルスタイン)が乳を出すのに適した気温は、4℃から21〜24℃だと言われている。これ以上に気温が高くなると、乳の生産量が減ることが知られている。例えば、中部地方や九州で行われた試験では、6-9月に搾乳された牛乳の量は、それ以外の場合と比べて16-20%ほど減少した(*1)。この理由としては、牛がエサを食べる量が減ることや、暑い環境に順応してホルモン分泌や代謝が変化することが考えられている。

◎カルシウムが減る

 また、牛乳といえばカルシウムが豊富だが、夏の牛乳はカルシウムをはじめとするミネラル類の量が減るようだ。

 九州の農業試験場で行われた実験では、6-9月の間に搾乳された牛乳では、カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、リンといったミネラルが、それ以外の時期の牛乳と比べて5〜8%ほど減少していることがわかった(*2)。これは、暑さによってミネラル分の代謝のされ方が変わることや、ミネラル分と他の乳成分との相互作用が変化することが関係していると考えられている。

◎乳脂肪が減る

 牛乳のおいしさの一つは乳脂肪にある。乳脂肪が低いものの方がさっぱりと、高いものの方がコクがあるように感じられるのではないだろうか。この乳脂肪も、夏の牛乳では下がってしまうことがある。

 沖縄県酪農協が1年間の牛乳の乳脂肪率を1ヶ月おきに測定した調査(*3)では、1月や12月の牛乳は3.6〜3.7%ほどの乳脂肪率であるのに対し、7月は3.4%近くに落ち込んでいることが明らかになった。なお、牛乳として販売できる基準は3.5%であるため、農家さんはエサや飼育環境を工夫して乳脂肪が落ち込まない工夫をしていることがあるようだ。乳脂肪が落ちてしまう理由としては、代謝の変化によって乳脂肪を体内で合成する際の材料が減ってしまうことが考えられている。

◎タンパク質が減る

 牛乳はタンパク質が含まれていることも愛飲される理由の一つである。牛乳に含まれるタンパク質の8割近くは「カゼイン」というタンパク質であるが、このカゼインの量も夏の牛乳では減っていることがわかっている。

 イタリアの農場で行われた試験では、春と夏の牛乳のαカゼインとβカゼインの量を測定したところ、αカゼインは18%、βカゼインは19%ほどそれぞれ減少していることが分かった(*4)。夏は、体温を下げるための熱放射にエネルギーが使われる。しかし、エサを食べる量が減っていることから、体内にある体脂肪やタンパク質をそのエネルギー源とすることが増え、それが牛乳中のタンパク質量の低下につながっているのではないかと考えられている。

 このように、夏は牛乳に含まれる成分量が全体的に減る傾向にあるようだ。普段牛の存在を意識しながら牛乳を飲むことは少ないが、牛乳が生き物によって作られていることを再確認させられる。また、成分が少し減ることは、裏を返せば、夏の牛乳はさっぱりした味わいになるのだと言えるかもしれない。季節ごとに牛乳の味を比べてみるのも面白そうだ。

 

執筆:大嶋絵理奈(Facebookでフォロー

参考文献
*1 高温環境下における乳牛の熱収支と乳生産
*2 牛乳中の主要ミネラル含量に及ぼす高温環境の影響
*3 高温時における脂肪酸カルシウム給与による乳脂率向上に関する研究
*4 Effects of the hot season on milk protein fractions in Holstein cows

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