アップルソースを卵とバターの代わりに使ってみたら・・・【スポンジ編】
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 お菓子の原材料である卵やバターには、脂肪分が多く含まれます。体型や健康を気にする方の中には、「お菓子を食べるのは幸せだけれど、脂肪を取りたくない…」というジレンマを抱えている方もいらっしゃることでしょう。しかし、幸いなことに、卵やバターの代わりになる食材があるようです。その名も、アップルソース。特別な意図がない限り、アップルソースが家にストックされていることは稀だとは思いますが、もし卵とバターの代わりにお菓子作りに使えたら嬉しいですよね。そこで今回は、”アップルソース置き換え実験”の第一弾として、洋菓子の基本であるスポンジ作りにおける卵とバターをアップルソースに置き換えてみました。

比較対象:通常のスポンジ

 まずは、比較対象として通常のスポンジを作ります。全卵2個に、グラニュー糖60gを入れて、10分ほどハンドミキサーで泡立てます。

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 ヘラからリボン状に落ちるような状態になったら、薄力粉60gをさらに加えてツヤが出るまで混ぜます。

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 次に、牛乳15gと溶かしバター20gを、生地の一部と乳化させてから生地全体に加えて混ぜ合わせます。

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 型に入れて、180度で30分間焼成します。

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 ふわふわなスポンジが完成しました!

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検証対象:アップルソースに置き換えたスポンジ

 次に、今のレシピの「卵」と「バター」の部分をアップルソースに置き換えてみたいと思います。

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 アップルソース100gにグラニュー糖60gを加え、ハンドミキサーで泡立てます。

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 泡立てます、と書きましたが、10分ほど格闘しても、一向に泡立つことはありませんでした。混ぜ続けても様子が変わらないので、10分程度で泡立てを終了させ、薄力粉60gを加えました。

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 そして、牛乳15gとアップルソース20gを、生地の一部と混ぜ合わせてから、生地全体に加えます。

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 180度で焼成。30分経っても表面に焼き色が見られなかったので、40分に延長しました。その結果、出来上がったのはこちらです。

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 ぜんぜん違うものが出来上がりました・・・!

 両者を並べてみるとこの通りです。

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 アップルソースに置き換えたものは、通常のスポンジよりも高さが1/3程度であり、スポンジのように空気を含んでいませんでした。また、食感ですが、表面は硬く、噛み切ったりナイフで切断するのにやや力が要りました。しかし、中身は餅のように粘度があり適度に柔らかい、いわゆる"もちもちとした食感"でした。アップルソースの時点では、リンゴのシャリシャリとした食感が目立ちましたが、焼成後はそのようなシャリシャリ感は残っておらず、なめらかな状態でした。味も、甘味に加えてリンゴの酸味が感じられ、これはこれで美味しいと言った印象でした。総合的な評価としては、スポンジの代わりにはならないけれど、別の新しいお菓子として十分ポテンシャルがある、といったところでした。

考察:原理的には「バター」の代わりにはなるかも?

 最後に、今回の実験から考えられることをまとめてみます。

 スポンジにおいて重要なのは、卵の起泡性です。卵の約75%は水分であり、この水分は、一定の表面をなるべく小さくしようとする力(表面張力)を持っています。卵白に含まれるタンパク質には、この表面張力を小さくするできる性質があります。結果、卵の中に空気が取り込みやすくなります。さらに、空気に触れると変性する性質があるため、泡立てた構造を維持することができるのです。先の工程で10分程度泡立てたように、スポンジにおいては、卵のこうした性質を利用して空気を沢山取り込むことが重要です。

 一方で、アップルソースには卵にはない成分が含まれています。それは「ペクチン」です。ペクチンは、ペクチン同士で結びついて絡み合ったネットワーク構造を作る性質があります(ゲル化と呼びます)。この構造は、糖やカルシウム、他のタンパク質が存在する条件で、より安定した構造となりやすいようです。ゆえに、スポンジ作りの工程で、砂糖や牛乳、小麦粉を加えることは、こうしたペクチンのネットワーク構造に役立った考えられるでしょう。

 このように、アップルソースにも、複雑な構造を作る能力はあるようですが、卵と同じような時間泡立てても空気が取り込まれなかったことから、卵のような起泡性を持たないことが推測されました。アップルソースの成分は、水分の表面張力を下げることには寄与しないようです。つまり、今回の比較で、アップルソースは、複雑な構造を作るという点では卵と類似していますが、水分の表面張力を下げないという点が異なることが分かりました。空気を含まない状態で複雑な構造ができあがることが、もっちりとした食感に結びついたのではないかと考えられます。

 ただし、ペクチンのようにゲル化する性質をもつ「ゼラチン」と卵白を混ぜ合わせると、ゼラチン由来のネットワーク構造と卵白の泡構造が絡み合って、より空気を含みつつもっちりとした状態になることが、マシュマロ作りなどで分かっています。このため、スポンジにおいては、卵白を泡立てる際にアップルソースを加えることで、ふわふわしつつもっちりとした食感を作ることができるかもしれません。スポンジ作りで加えられる油分(バター)は、口当たりを良くするために加えられますので、アップルソースによって生地の食感を変えることで、バターが不要になる可能性があると言えそうです。

 以上より、今回の実験から、スポンジにおいては、

 ・卵は必要不可欠だが、
 ・バターの代わりにアップルソースならOK?

 ということが推測されました。今後も実験を重ね、スポンジや別のお菓子におけるアップルソース代用の可能性を探っていきたいと思います!

執筆:大嶋絵理奈(Facebookでフォロー

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