「Bean to Bar」を科学して美味しいチョコレートを作ろう-実践編-
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 原材料の入手や製造工程の一つ一つを自らの手で行い、チョコレートのさらなる美味しさを追求する「Bean to Bar」。自宅でコーヒー豆からコーヒーを淹れるように、カカオ豆から自分好みのオリジナルチョコレートを作れたら、楽しそうじゃありませんか。実は、誰でも自宅で簡単にBean to Barを体験できるキットがあるようです。

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 その名も「カカオ豆から手作りチョコレート・キット」。まんまですね。こちらは、インドネシアからカカオ豆を調達し、上質なチョコレートを販売する京都のDari-Kという企業さんが、カカオの魅力を伝えるために作られたキットです。

 キットの中には、カカオ80gと流し込み用のシリコン型、作り方やカカオの歴史の詰まった34ページのブックレットがついています。ブックレットに従って作っていくと、香りが高くカカオの粒感が楽しめるチョコレートが手作りできるのだそうです。

 今日はこちらのキットを使って、実際にBean to Barチョコレート作りを体験してみようと思います!

1.カカオ豆を洗う

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 まずは表面の汚れを取るためにカカオ豆を洗います。ブックレットには、水がにごらなくなるまで5分ほど洗うとあります。きっとこれはすぐ終わるのでしょう!さっそくお米を研ぐ要領で洗ってみました。

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 予想以上に、結構水が濁り続けます。1回、2回、3回と水を変えていくものの…濁りが取れない。濁ってて許されるのは温泉か日本酒ぐらいなのに…。水をよく見てみると、どうやら周囲の皮の繊維が微妙に溶け出している模様です。

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 明らかに5分以上洗ったにもかかわらず、一向に透明になる気配はなかったので、10分ぐらいたったところで引き上げました。出だしからコケた感は否めません。

 可能なかぎりペーパーで水分を吸い取らせます。

2.フライパンで焙煎する

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 気を取り直してお次は焙煎。ブックレットには「弱火で」と書いてあるので、IHコンロの「160度」でしばし加熱。10〜20分ほど焙煎を続けているとパチパチという音がするそうですが…耳をすましても、IHコンロのジリジリという音だけがわずかに聞き取れるのみです。辛抱強く加熱し続けても、一向にポップコーンのようなパチパチ☆サウンドは発生しません。しかし、カカオらしいが鼻腔を刺激してきました。香りだけでお腹いっぱいになれそう…!

 50分ほど焙煎を続けたところ、時々「パチっ」と聞こえなくもない音がしだしたのと、手で割れる程度には乾燥が進んでいる雰囲気が漂い出したので、終了させました。

3.皮をむく

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 そして、触れる温度まで冷ましてから指先でひたすら皮を剥いていきます…これはもうサイエンスの力が及ぶ範囲ではなく、ひたすらに剥いていくしかありません…こんなに皮を剥くのはピーナッツぐらいでしか経験がないはずです…耐久レースです…最初にギュっと押すようにして皮に亀裂を入れて、その部分から剥いていくと、最短で完走できそうでした…。

4.すり鉢で粉砕する

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 苦労して剥いて豆状の物体(いわゆるカカオニブ)を得られたら、次はこちらを粉末にしなければなりません。これまた道のりは長そうです。

 まずはグリグリと豆を小さく砕きます。そして、すり鉢にすべての罪をなすりつけるような勢いでグオングオンとすり潰していきます。(擬音語でしか表現ができなくて恐縮です…。)

 結構力がいる作業なので、正直女性には辛いものがありました。ブックレットには「ここがふんばりどころ!」とひらがなで可愛らしく書いてありますが、大人も顔負けの十分すぎる筋トレです。ゆえに、憎き人物を思い出しながら混ぜ続けるほかありませんでした。私は大事な友人を洗脳しやがったマルチ商法の「師匠」の顔をすりつぶすイメージをしながら混ぜ続けました。

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 3人体制でそれぞれの憎しみを昇華させていると、やっと土っぽくなってまいりました。これで良いのか、全く確信が持てませんが、次に進むことにします。

5.湯煎で溶かす

 さらにペースト化に向けて全力を尽くしていきたいと思います。カカオに含まれる油脂は30度程度で溶けるようです。すり鉢の熱伝導率の悪そうなさまを考慮して、80度で加熱し続けました。

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 ・・・一向に溶ける気配がありません!!ペーストとは程遠い状況です。温度を160度に上げたりしても全然ダメでした。1時間ぐらい格闘したところでめげてしまいましたので、次の工程である「砂糖30gを入れる」を実行してみました。なんとなくツヤが増したような気はしますが…。

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 そして混ぜ続けること2時間。一向に変わらないざらつきを目の当たりにして、全筋細胞が完全に諦めモードに。砂糖を入れたことによりなんとなくまとまりは出たので、無理やり型に入れ込んで終わらせました。

6.冷やして固める

 型に入れたら、あとは冷やして固めて完成です。冷蔵で2〜3時間とありましたが、時間のリミットが迫っていたので冷凍1時間に短縮させて冷やしました。

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7.食べるぞ!

 1時間後、恐る恐る取り出しました。これほどまでに冷凍庫を開けるのが怖かったことは人生で1度きりです。冷凍庫を開けると…

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 ちゃんと固まってます!!

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 無事にポロンと取ることもできました!!

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 気分が上々としてしまったので、思わずオシャンティーに並べ、撮影媒体をiPhoneから一眼レフに変更しました。すべての工程があまりに予想通りにならなかったので不安でしたが、やはり中身の大半は油分ですので、温度を下げると固まるのですね。

 そして、気になるのは、そのお味…!長いトンネルを抜けるとそこは…

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 「Bean to Barであった!!」

 食感は予想通りザラザラしているものの、思ったほど目立ちません。むしろBean to Barらしさが出ているというポジティブ評価が可能です。そして何より、香りが芳醇!これは手作りした甲斐がある芳醇さでした。前方に座しておられる、お菓子メディアcake.tokyoの編集長であり過去にBean to Bar特集も組んだことのある平野氏(@yriica)に食べさせたところ…

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 「専門店っぽい!」

 うぉぉぉぉ…ありがたきお言葉…!

 背景を何も知らない人に食べさせ、「すべては計算済みのあらびきなのだ」とドヤっても通用してしまうほど香りが良く、ほどよいザラつきが美味しさに結びついている仕上がりになっておりました。きっともっと美味しく作ることはできるのだとは思いますが、ひとまず、終わりだけは良かったので、成功としましょう!無事、カカオ豆からチョコレートが作れました!

 最後に、次回のために反省点を、宮城大学食産業学部の菰田俊一先生に、3点ほどアドバイスを仰いでみました!

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Q1.カカオ豆の焙煎はどれぐらいの時間行うと良いでしょうか?

菰田焙煎の温度と時間は、メーカー各々でノウハウがあるようで、 条件によって味やフレーバーに違いが出てきます。 カカオ豆の種類や原産地などによっても違いが出てくるので、 組み合わせが重要になるようです。一般的には、120℃前後が目安で、私のグループでは、120℃ 、20分間で焙煎しています。ちなみに使っているのは家庭用のオーブンレンジです。

Q2. なかなか粉末にならないのですがどうしたら良いでしょうか?

菰田はじめに家庭用のフードプロセッサーで粉砕すると良いと思います 。ただし、粉砕しすぎると、油分が出てきて急に粘ってきます。 そうすると家庭用のフードプロセッサーの場合にはモーターに負担 が掛かり故障の原因になりますので、 粉砕しすぎには気を付けて下さい。粉状になったら、 すり鉢に移し、粉砕作業を続けて下さい。次第に油分( カカオバター)が出てきますが、40℃ くらいのお湯につけながら作業を続けると良いと思います。

Q3.湯煎で溶けなかったのはなぜでしょうか?

菰田原因は、すり鉢での粉砕作業が足らなかったからだと思います。 手作業で粉砕作業をするのであれば最低でも2時間の作業が必要に なります。 大手メーカーなどでは24時間程度連続で作業をしているようです 。この作業を十分進めると、湯銭をしなくても液体状になります。 ここで液体状になるのは、カカオに含まれる粒子が粉砕・ 磨砕によってミクロン単位にまで小さくなるからです。 熱で溶けるわけではないので、 加熱だけではなかなか液体状にはなりません。また、 一般的には油分を追加するために固体のカカオバターを加えること が多いようです。そうするとさらに滑らかになります。 油分は加熱で液体状になります。

 みなさんもカカオ豆を手に入れればおうちでも作れますので、ぜひチャレンジしてみてください!多分1日掛かりになるので、時間があるときにトライすると良いと思います!

 Dari K株式会社の「カカオ豆から手作りチョコレート・キット」はこちらより購入できます!

 本稿の執筆にあたり、原稿のご校閲にご協力くださったDari K株式会社、bean to barに関するアドバイスをくださった宮城大学の菰田俊一先生に深く御礼申し上げます。

執筆:大嶋絵理奈(Facebookでフォロー

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Cooperator

DariK_photo Dari K株式会社

 Dari K株式会社(ダリケー)。「カカオを通じて世界を変える」という理念のもと、カカオ豆の輸入・卸やチョコレート菓子の製造・販売を行う。2011年設立、京都を拠点とする。インドネシアのカカオ農家に発酵の技術を伝授し、質の高いカカオ豆のフェアトレードを実現している。自社のチョコレートはすべてカカオ豆から手がけ、カカオの風味を最大限に活かした製造法が特徴である。カカオの持つ可能性をチョコレート以外の加工品へ応用することにも挑戦している。
◎ホームページ:Dari K(ダリケー)


komoda_photo (1) 菰田俊一

 菰田俊一(こもだとしかず)。宮城大学食産業学部准教授。専門分野は応用微生物学、食品有機化学、食品衛生学。血圧調整や食物アレルギーに関連する成分など、食品中の健康成分に関連する研究を進めており、中でもチョコレートに含まれる成分に着目。食品衛生やHACCPシステムに関する講演会や、手作りチョコレートの出張講習会の講師も務める。出張講習会の依頼は随時受け付け中!

◎宮城大学の教員紹介ページ:http://www.myu.ac.jp/teacher/syokusan-teacher/komoda


宮城大学チョコレート研究会

 宮城大学チョコレート研究会。宮城大学太白キャンパスを拠点に活動する研究会。菰田俊一先生が顧問を務める(2017年1月現在)。チョコレートの機能性やレシピを研究している。オープンキャンパスでは、Bean to Barワークショップも開催。

◎ブログ:宮城大学チョコレート研究会
◎Twitter:@cha_ri0510

 

 

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