体の「悪い脂肪」を「良い脂肪」に変えるスイッチを発見(米研究)
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 肥満の元となる「白色脂肪」を、脂肪を燃焼する「褐色脂肪」に変化させるしくみを、アメリカの研究者らが発見した。白色脂肪の中から「PexRAP」というタンパク質をなくすと、褐色脂肪のような性質を示すようになるという。研究結果は、2017年9月に『Cell Report』にて発表された。

肥満を加速する脂肪と、脂肪を燃やす脂肪

 私たちの多くは、体に脂肪を蓄えることを恐れ、食事のカロリーを気にし、運動に励む。体に脂肪が溜まることで見た目を悪くしたり、生活習慣病を引き起こしたりすることは、誰だって避けたいだろう。ただ、脂肪は全て悪者というわけではない。脂肪は、脂肪を燃やしうる可能性を秘めている。

 体の中には、主に3種類の脂肪があることがわかっている。

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 一つは、あなたがイメージする通り、肥満に繋がる脂肪だ。この脂肪は「白色脂肪細胞」と呼ばれ、食事から得られた余分なエネルギーを蓄えるはたらきを持っている。もう一つは、「褐色脂肪細胞」と呼ばれる脂肪で、脂肪の成分(脂肪酸)を使って熱を生み出すはたらきを持っている。つまり、褐色脂肪細胞は脂肪を燃焼するのだ。また、最近は「ベージュ細胞」と呼ばれる脂肪も見つかっており、褐色脂肪細胞と似たはたらきを持つことがわかってきた。

 残念ながら、体の中にある大半は、白色脂肪細胞である。しかし、白色脂肪細胞は、褐色脂肪細胞やベージュ細胞に変えられる可能性があることがわかってきた。

白色脂肪が褐色脂肪に変わる

 アメリカのセントルイス・ワシントン大学の研究者らは、白色脂肪細胞を褐色脂肪細胞に変えるスイッチとして、「PexRAP」という成分に注目した。PexRAPとは、食べ物から得られた脂肪をエネルギーとして蓄える形(脂質)にするはたらきを持つ酵素だ。PexRAPは、白色脂肪細胞の中にはたくさんあるが、褐色脂肪細胞の中では量が多くない。そこで研究者らは、PexRAPの量の違いが、白色脂肪細胞と褐色脂肪細胞の違いに関係していると考えた。

 研究者らは、遺伝子を組み換えて、PexRAPを作らないマウスを作った。すると、通常のマウスと比べて体のサイズが小さく、エネルギー消費量が多いマウスになった。このことは、PexRAPがなくなることで、体に脂肪を蓄える能力が低下したことや、体の代謝が上がってエネルギーを作り出しやすくなったことを予測させた。

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 そこで、RexRAPを作らないマウスの白色脂肪細胞の性質を調べたところ、実際に細胞の数が減っており、蓄えている脂質の量も少なかった。さらに、脂肪を燃焼するときに使われる「UCP1」と呼ばれるタンパク質の量が増えていることがわかった。UCP1は、褐色脂肪細胞やベージュ細胞が多く持つタンパク質である。他にも、白色脂肪細胞の中に、褐色脂肪細胞に多く含まれるタンパク質が観察されたことから、PexRAPがなくなることで、白色脂肪細胞が褐色脂肪細胞の性質を持つように変化したことがわかった。

脂肪の種類を切り替えるスイッチ

 研究者らがさらに、PexRAPがどのように白色脂肪細胞を褐色脂肪細胞に変えているのかを調べたところ、PexRAPは脂質を合成して脂肪を蓄えるのを促すだけでなく、褐色脂肪細胞ではたらくタンパク質の合成をコントロールしていることがわかった。

 彼らの説によれば、白色脂肪細胞は、「褐色脂肪細胞になることを抑えられている状態」にあるのだという。褐色脂肪細胞ではたらくUCP1などのタンパク質が作られるためには、「PPARγ」と「PRDM16」という物質がくっつく必要がある。この2つがくっつけば、褐色脂肪細胞ではたらくタンパク質が作られて、褐色脂肪細胞の性質を持つようになれる。

 PexRAPは、この2つがくっつくのを邪魔することで、褐色脂肪細胞ではたらくタンパク質を作られないようにしているようだ。通常、白色脂肪細胞の中にはPexRAPの量が多いので、褐色脂肪細胞ではたらくタンパク質は作られない。ところが、PexRAPをなくせば、白色脂肪細胞の中でも褐色脂肪細胞のタンパク質が作られるようになるため、脂肪を燃焼するような機能を持つようになるというのだ。PexRAPは、白色脂肪細胞でい続けるか、褐色脂肪細胞になるかを決めるスイッチのような役割を持つと言えるだろう。

 脂肪の種類が切り替わる現象については、まだ解明が進み始めたばかりである。しかし、さらに研究が進めば、私たちの体の中の白色脂肪細胞を褐色脂肪細胞に変化させるような薬が作られ、肥満や生活習慣病の予防に役立ることができる日がくるかもしれない。

執筆:大嶋絵理奈(Facebookでフォロー

元論文
 Lodhi IJ, Dean JM, He A, Park H, Tan M, Feng C, Song H, Hsu FF, Semenkovich CF. PexRAP inhibits PRDM16-mediated thermogenic gene expression. Cell Reports, 20, 2766–2774
http://www.cell.com/cell-reports/pdf/S2211-1247(17)31219-6.pdf

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