グルテンをカットした小麦の開発に成功(研究結果)
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 スペインの研究チームが、グルテンを約85%カットした小麦の開発に成功した。この小麦を使えば、体質やダイエットが理由でグルテンを食べられない人でも、パンやパスタを満足に楽しめるようになるかもしれない。研究成果は、2017年9月に 『Plant Biotechnology Journal』にて発表された。

グルテンフリーを望む人が増えている

 パンの弾力やパスタのもちもちとした食感に欠かせないのが、小麦粉に含まれる「グルテン」というタンパク質だ。パンやパスタ麺作りの過程で小麦粉をこねると、小麦粉の中の「グルテニン」と「グリアジン」という2種類のタンパク質が結びついて、グルテンになる。

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 グルテンは多くの身近な食べ物に含まれているが、近年では、グルテンの摂取を控えたい人たちが増えてきている。

 たとえば、「セアリック病」と呼ばれる、免疫系が自分の細胞を攻撃してしまう病気は、グリアジンがきっかけで発症する。セアリック病の患者にとって、グルテンを含む食品は命取りなのだ。また、セアリック病でなくとも、牛乳がお腹に合わない人がいるように、グルテンがお腹に合わない「グルテン過敏症」の人がいる。グルテン過敏症の人がグルテンを含む食品を食べると、体に様々な不調が出ることが知られている。

 グルテンを含む食品が食べられないと不都合な事も多く、食の楽しみも減ってしまいがちだ。これまでグルテンを控えたい人たちは、小麦を原料とするパンやパスタを満足に食べることができなかった。しかし、グルテンを含まない小麦があれば、話は別である。

「ゲノム編集」で小麦のグルテンカットに成功

 スペインの研究機関、Institute for Sustainable Agricultureの研究者を中心とするグループは、「ゲノム編集」という技術を使って、グルテンの量を抑えた小麦を作ることに成功したと発表した。

 タンパク質であるグルテニンやグリアジンは、小麦の細胞の核の中にある遺伝子をもとに作られる。言い換えれば、遺伝子がなくなれば、グルテニンやグリアジンは作られなくなるのだ。

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 これまで、伝統的な品種改良のやり方で、グルテニンやグリアジンの遺伝子をもたない小麦品種を生み出そうと努力が重ねられてきたが、成功事例はなかった。そこで、研究者らは、最新の「CRISPR-Cas9」(クリスパー・キャスナイン)という物質を使ったゲノム編集技術で、グリアジンの遺伝子を壊すことを試みた。

 CRISPR-Cas9とは、遺伝子に切れ込みを入れるハサミのような物質であり、特定の遺伝子配列だけに切れ込みを入れることができる。切れ込みが入った遺伝子からは、タンパク質を作ることができなくなる。

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 研究者らは、グリアジンの中でも特に不調を引き起こす原因とされている「αグリアジン」の遺伝子に切れ込みを入れ、αグリアジンの遺伝子を壊したパン小麦とデュラム小麦を作った。その結果、それらの小麦に含まれるαグリアジンの量は32〜82%減っていた。さらに、他のグリアジンである「γグリアジン」の量も25-94%ほど減っていた。

 これらの小麦に含まれる少量のグリアジンに対して、どれぐらい免疫反応が起こるかを調べたところ、通常の小麦よりも85%ほど免疫反応が起こらなかったという。他にも、CRISPR-Cas9が他の遺伝子を壊していないかや、次世代にもグリアジンの量が低下する性質が正常に遺伝するかについても調べられたが、いずれも問題がない品種を作ることができたという。

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 ゲノム編集を使ったグルテンフリー研究はまだまだ始まったばかりである。将来、この小麦が市場に出回るまでには、様々な安全性の試験をクリアしなければならない。しかし、グルテンをカットした小麦を食用に使うことができるようになれば、グルテンを食べられない人でもパンやパスタを楽しめる日が来るかもしれない。

 ゲノム編集は、「遺伝子操作」の一種ではあるが、外来の遺伝子を入れ込んでいないため「遺伝子組み換え」には当たらない。ただし、最新の技術であるため、まだ世界的にもガイドラインが定まっておらず、さまざまな考えがある。一般的に、食品の遺伝子組み換えには抵抗を示す人が多い。しかし、安全性が十分確認された上で、遺伝子操作によって一定の人々を幸せにできるのだとすれば、それはどのように考えていけばよいだろうか。

執筆:大嶋絵理奈(Facebookでフォロー

元論文
 Susana Sánchez-León, Javier Gil-Humanes, Carmen V. Ozuna, María J. Giménez, Carolina Sousa, Daniel F. Voytas and Francisco Barro (2017), Low-gluten, non-transgenic wheat engineered with CRISPR/Cas9. Plant Biotechnol J., 2017 Sep 18.

http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/pbi.12837/epdf

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