ストレスは肥満と同じぐらい腸内細菌を変える(研究結果)
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 脂肪の多い食事やストレスは、気分障害を引き起こしたり腸内細菌の構成を変化させたりすることが知られているが、そうした影響の出方には性差があることが、マウスを使った実験で明らかになった。オスのマウスは肥満とストレスで不安が行動に出やすくなり、メスのマウスはストレスが肥満と同じぐらい腸内細菌を変化させた。研究成果は、2017年10月に『Scientific Reports』にて発表された。

腸内細菌は体型や気分を変える

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 近年、体型と腸内細菌は密接に関係していることが分かってきた。たとえば、人の大腸に多く生息する「フィルミクテス門」と「バクテロイデス門」という2種類の細菌がいる。このうち、肥満の人にはフィルミクテス門の細菌が、痩身の人にはバクテロイデス門の細菌が多いことが知られている。フィルミクテス門は体内に吸収する脂質の量を増やすはたらきをもち、高カロリーの食事を摂取することで増えると言われている。

 また、腸内細菌は、人の気分に関わる脳内物質を作ることにも関係すると分かってきた。たとえば、腸内に細菌を一切持たない無菌マウスを使った実験では、脳の成長に関わる「BDNF」や、神経の興奮を抑える「GABA」という物質が通常よりも少なく、マウスの行動も変化することが分かっている。肥満は、不安やうつ症状と関連のある要素の一つとして知られているが、肥満による腸内細菌の構成の変化が、作られる脳内物質を変えるためではないかと指摘されている。

 このように、肥満や気分の落ち込みを語る上で、腸内細菌は無視できない存在となってきた。そこで、そこで、中国・上海交通大学の研究者らは、オスとメスのマウスを使って、肥満やストレスと、腸内細菌の関係を詳しく調べた。

オスは不安になりやすい、メスはストレスに弱い

(1)肥満は腸内細菌を変える?
 まずはオスとメスのマウスをそれぞれ、普通の食事を与える群と、高脂肪食(カロリーの60%が脂肪)を与える群に分けた。0日目の糞便を採取して、81日間育て、81日目に再び糞便を採取した。糞便を採取するのは、糞便に含まれる菌から腸内細菌の構成を調べるためである。こうして、高脂肪食によって肥満になることは、腸内細菌を変化させるかどうかを調べた。

(2)肥満は不安行動を増す?
 さらにマウスを育て続け、85-91日目に、4種類のマウスの行動試験を行った。これらの行動試験は、マウスの不安状態を計測するためによく行われる試験である。たとえば、十字の迷路を歩かせる試験では、壁のある道を歩く時間が多ければ不安が大きく、壁のない道を歩く時間が多ければ不安が少ないと判断される。こうして、普通の食事で育ったマウスと、高脂肪食で太ったマウスでは、不安状態に違いがあるのかを調べた。

(3)慢性ストレスは不安行動を増す?
 113-130日目に、両方のマウスに慢性的にストレスを与える試験を行った。内容は、「寝床を湿気させる」「8度か40度の水で強制水泳」「ゲージを傾ける」「寝てる時に電気をつける」といったサドめなものであり、ランダムかつ突発的に行った。その後、131-136日目に、(2)と同じ行動試験が行われ、慢性的なストレスによって不安状態が変化するかどうかを調べた。

(4)慢性ストレスは腸内細菌を変える?
 最終日の136日目には再び糞便が採取し、0日目や、81日目と比べて腸内細菌の構成が変化しているかどうかを調べた。

mouse こうした実験を行ったところ、次のことが分かった。

(1)肥満・ストレスと不安行動
 オスのマウスでは、肥満によって行動試験における不安行動が増えること、さらに、ストレスを与えると活発性が低下することが明らかになった。ただし、メスのマウスでは、肥満やストレスよる不安行動の有意な変化はなかった。

(2)肥満・ストレスと腸内細菌
 0日目、81日目、136日目の腸内細菌叢の類似度を調べたところ、メスのマウスでは、普通の食事で育ったマウスでも、ストレスによって、腸内細菌の状態が高脂肪食で育ったマウスに似てくることが明らかになった。

 つまり、要約すると、

・オスのほうが、肥満やストレスによって不安が行動に出やすいこと
・メスはストレスを受けると、たとえ普通の食事を摂っていても高脂肪食を摂取するのと似たような腸内細菌の変化が起こること

 が明らかになったといえる。

 これはあくまでマウスの実験であるが、人においても、不安の感じやすさやストレス耐性に男女差があることを、腸内細菌の視点から説明できるようになるかもしれない。特に女性においては、健康的な食生活に気を使っていても、ストレスがそれを台無しにする可能性があるという、なかなか衝撃的な研究である。落ち込みの予防や体質に改善には、食事とストレスの両方をコントロールすることが大切なようだ。

執筆:大嶋絵理奈(Facebookでフォロー

元論文
 Bridgewater LC, et al. (2017), Gender-based differences in host behavior and gut microbiota composition in response to high fat diet and stress in a mouse model. Sci Rep. 2017, 7:10776.
https://www.nature.com/articles/s41598-017-11069-4.pdf

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