味覚は脳や腸にもある。味覚受容体の役割は「味を感じる」だけではなかった。
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 私たちが食べ物の味を感じる部位は、舌である。舌の上には、味覚を司る「味覚受容体」と呼ばれるセンサーがあり、食べ物の成分が味覚受容体にくっつくことで、味を感じることができる。
 味覚は、食べ物の味を識別する感覚であり、元々は生きるために必要な食べ物を摂取し、毒物や腐ったものを避けるために発達したと言われている。しかし、最近の研究によれば、味覚のはたらきは味の識別だけではないようだ。脳や腸にもある味覚受容体の役割を見てみよう。

味覚受容体は食べ物の成分を検知できる

 私たち人間の味覚には、甘味・旨味・塩味・酸味・苦味の5種類がある。いずれの味も、専用の味覚受容体がある。目には見えないが、私たちの舌には図のような味覚受容体が8000個ほどあると言われている。

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(画像:Common Sense about Taste: From Mammals to Insects より/日本語に修正)

 たとえば、甘味の受容体は、「T1R2」「T1R3」という2種類のタンパク質が組み合わさってできており、砂糖に含まれるグルコースや、人工甘味料であるアスパルテームなどの甘味成分を検知することができる。また、旨味の受容体は、「T1R1」「T1R3」という2種類のタンパク質が組み合わさってできており、昆布だしの成分であるグルタミン酸ナトリウムや、かつおだしの成分であるイノシン酸ナトリウムなどの旨味成分を検知することができる。

 このように、それぞれの味覚受容体は、食べ物の成分を検知することができる。検知された成分の味覚情報は、神経を通じて脳まで届き、香りや見た目などの情報と合わさって、最終的な味の判断が行われる。

 ところが、近年の研究で、こうした味覚受容体は舌以外の場所にもあることが分かってきた。さらに、それらの場所では、味覚受容体が食べ物の成分を検知できる性質を利用して、味覚受容体を別の目的に使う場合があることが分かってきたのだ。

脳や胃腸の味覚は、血糖値や食欲をコントロール

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 その一つは脳である。脳の中には、甘味受容体と旨味受容体があることが分かっている(*1)(*2)。私たちの脳は、食欲や血糖値をコントロールするために指令を出す。たとえば、空腹時には食欲を高めて食物の摂取を促し、満腹になったらエネルギーを貯蔵するために血糖値を下げるようにはたらきかける。こうしたコントロールを行うためには、脳が体の中の栄養状態を感知する必要がある。このとき使われるのが、味覚受容体なのだ。脳には舌と同じ甘味受容体と旨味受容体があり、これらが糖分やアミノ酸を感知することで、食欲や血糖値のコントロールに役立っているようだ。

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 もう一つは胃腸である。胃腸の中にも、甘味受容体と旨味受容体、そして苦味受容体があることが分かっている(*3)(*4)。胃腸の中の味覚受容体が食べ物を検知すると、消化や吸収に関わるホルモンが分泌される。脳と同様に胃腸においても、栄養状態を検知することで血糖値や食欲のコントロールに関わる(脳と腸は神経を介して密接に情報をやりとりしている)。また、苦味受容体は、毒物を排除するために吐き気を催すようなはたらきもあるようだ。舌で防衛しきれなかった毒物の第二関門のような存在なのかもしれない。

 つまり、脳や腸の中の味覚受容体は、体の栄養状態やエネルギーをコントロールするために使われているのだ。食べ物の味の認識だけに関わると考えられてきた味覚は、舌以外の部分でも、食物摂取行動や食べものからエネルギーを得ることに関わり、私たちの生存を支えているようだ。

執筆:大嶋絵理奈(Facebookでフォロー

参考文献
*1 Sweet taste signaling functions as a hypothalamic glucose sensor.
*2 Amino acid sensing in hypothalamic tanycytes via umami taste receptors
*3 Sugars, Sweet Taste Receptors, and Brain Responses
*4 Taste Cells of the Gut and Gastrointestinal Chemosensation

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