しっとり?パサパサ?ーお菓子のおいしさを左右する「水分」の測り方
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 BAKEの研究開発チームである「OPENLAB」では、既存商品の改善や新商品開発に、科学の知見を導入しています。より良い配合や焼き方の条件、よりおいしく作れる機材を探るために、調理科学関連の文献をかき集めることもあれば、自ら手を動かして実験を行うこともあります。

 今回はその中から、あらゆるお菓子の食感やテクスチャに影響する「水分」についての実験例を紹介します!

水分は食品のおいしさを左右する

 水分は食べ物の印象とおいしさを左右する大きな要素です。お菓子や多くの食品は、水分の扱い一つで「しっとり」というポジティブな評価を得られることもあれば、「湿気ている」というネガティブな評価に転じてしまうこともあります。このため、食品中の水分をコントロールすることはとても大切です。

 水分をコントロールするためには、まず、どの条件でお菓子をつくったときに、どのくらいの水分を含むかを把握する必要があります。目に見えない水分の量は、どのように把握することができるのでしょうか。

蒸発させて重さを比較する

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 その一つは、お菓子を乾燥させて、前後の重量を比較するというものです。お菓子を高温の容器の中に入れて完全に乾燥させると、水分が蒸発した分だけ重さが減ります。つまり乾燥前後の重量の差の分だけ、水分を含んでいたと判断することができます。とてもわかりやすい方法ですね。これは「加熱乾燥法」と呼ばれるもので、水分量を測定するメジャーな方法の一つです。
 この方法は、お菓子を作るときの条件を検討するときに役立っています。BAKEでも現在進めているとある新商品開発の中で、しっとりする生地を作る条件を探すために、この方法で検証を進めています。

“動く水”の割合を調べる

 はたまた、最適な製造方法で作っても、外気や包装の条件でお菓子の質が変わってきてしまうことがあります。たとえば、夏場は、人と同様にお菓子も暑さと湿気にやられがちです。BAKEのチーズタルトも、夏場になるとチーズタルトのタルト部分が少しふんにゃりしてしまうことが時々起こります。
 これを防ぐ方法を検討するときに役立つのが、「水分活性の測定」です。実は、食品の中に含まれる水分には、他の成分と結びついて動かない水(結合水)と、自由に動ける水(自由水)の2種類があります。

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 食品に含まれる水分のうち、動くことができる自由水の割合を示したものが「水分活性(Aw)」で、数値は0.000〜1.000の間で表されます。たとえばAwが0.800であれば、その食品の水分活性は80%に相当すると言えます。加熱乾燥法は自由水・結合水両方をあわせた全体の水分を測定するのに対し、水分活性は自由水のみを測定するところに違いがあるのです。

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 また、水分含有量の多さと水分活性の高さは比例しません。たとえばジャムは、水分含有量は多いですが、水分活性は低いです。ジャムを常温で置いていても腐らないのは、多くの水分がジャムの食品成分と結びついており、カビがはえたり微生物が繁殖するために使える水分が少ないからです。

 水分活性は品質保持の面でよく使われるものではありますが、水分活性の増減を見ることで、室内の湿気などの環境が、お菓子に与える影響を調べることができるのです。BAKEでも昨年、夏場のふんにゃり問題に対策を打つべく、焼き上がり後の保管条件をさまざまにかえて、水分活性の変化を測定しました。

 今回は水分を含む方に注目しましたが、「パサパサ感」のような、水分が不足している状態を解決するときにもこうした測定は役に立ちます。このようにして、目に見えない水分を、数値という形で客観的に表すことで、もっともおいしい食感を作る条件を探したり、品質を安定させたりすることにつながります。これからも、OPENLABでの実験の様子をちょくちょく公開してまいりますので、お楽しみいただければ嬉しいです!

 本稿の執筆にあたり、原稿の科学的整合性を丁寧にご検討くださった宮城大学の石川伸一先生に深く御礼申し上げます。

執筆:大嶋絵理奈(Facebookでフォロー

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5eff3e69588202e2c967c13bd42580c7 石川伸一

 石川伸一(いしかわ・しんいち)。1973年、福島県生まれ。98年、東北大学大学院農学研究科修了。日本学術振興会特別研究員、北里大学助手・講師、カナダ・ゲルフ大学客員研究員(日本学術振興会海外特別研究員)などを経て、現在、宮城大学食産業学部准教授。博士(農学)。専門は分子食品学、分子調理学、分子栄養学。主な研究テーマは、鶏卵の栄養・機能性に関する研究。

◎著書:『料理と科学のおいしい出会い』(化学同人)
◎ウェブサイト:「分子調理ラボ」

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