五感をハック!バーチャルカクテルデバイス「Vocktail」が開発される
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 色、味、香りを変化させることで、味知覚を変化させるデバイス「Vocktail」(Virtual Cocktail)が、シンガポールの研究者らによって開発された。刺激の組み合わせを変化させることで、ただの水や既存の飲料に新たなフレーバー体験を追加することができる。研究成果は、2017年10月に開催された国際会議「Association for Computing Machinery Multimedia Conference 2017」で発表された。

五感を騙せば味の知覚を変えられる

 人が食べ物や飲み物の味を知覚するときには、五感を総動員させている。味覚や香り、見た目、食感、咀嚼音など、さまざまな情報が統合されて、一つの味として認識されるのだ。反対に、五感情報のどれか一つでも欠けてしまうと、何の味なのかが分からなくなることもしばしばである。たとえば、目をつむってキャンディを舐めると、何味のキャンディなのかが曖昧になることがある。”キャンディの色”という情報が欠けるだけで、何味であるかの判断が難しくなるのだ。

 近年では、こうした味の知覚のしくみを利用して、五感刺激を与えることでバーチャルな味体験を生み出すデバイスの研究が進んでいる。

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 以前紹介した「メタクッキー」は、視覚と嗅覚に刺激を与えることで、プレーンのクッキーをチョコレート味のクッキーだと錯覚することができるデバイスであった。

 今回、シンガポール国立大学のNimesha Ranasingheさんらは、新たなデバイスを開発した。バーチャルカクテル「Vocktail」である。

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(画像:https://www.youtube.com/watch?v=RQI6UDP1kOQ よりキャプチャ / 以下同様)

 カクテルといえば、リキュールやジュース、フルーツなどをミックスして、独自の味を作り出すものである。Vocktailは、視覚・嗅覚・味覚刺激を利用して、食材をミックスすることなしに、飲料の味を変化させることができる。その概要を見てみよう。

Vocktailで味体験を拡張

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 Vocktailは、カクテルグラス部分と土台部分から成っている。土台の部分には、香りの成分が入ったカートリッジ(Aroma bottles)と、それを送るエアポンプ、刺激を制御するためのコントロールパネルが入っている。カクテルグラス部分には、飲み物の色を変化させる光(LED light)、舌に電気刺激を与えて味覚を変化させる電極(Electrodes)、そして香り成分の出口(Aroma tubes)が付属している。

 どの色、味、香りにするかは、スマートフォン(Mobile device)のアプリからBluetooth経由で設定することができる。グラス部分に飲み物を注ぎ、アプリで条件を設定してから、飲む。

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 色は、赤・緑・青のLEDが搭載されているので、原色のほかに、黄色や紫、オレンジなどを作ることができる。色は、食材を口にする前の味への先入観のほかに、温度感覚にも影響を与える。

 味は、酸味・苦味・塩味の3種類の味覚を追加することができる。2枚の銀の電極に流す電流や周波数を変えることで3種類の味を表現することができる。

 香りは、カートリッジの中に液体の形で入っており、エアポンプで空気を発生させて鼻の部分に届けるようになっている。実験では、チョコレートやイカスミ、バニラ、ライムの香りなどが使われている。

 Vocktailを使って色、味、香りをさまざまに組み合わせることで、ただの水に味をつけるだけでなく、既存の飲み物の味を変えることができる。また、組み合わせ次第で味の印象は大きく異なる。たとえば、ただの水を、酸味を連想させるライムの香りと酸味刺激と緑色の設定で飲めば、本当にライムの味だと錯覚しやすいだろう。反対に、甘みを連想させるチョコレートの香りと塩味刺激といった具合に、連想度の低い組み合わせで飲むと、これまで体験したことのない味に感じられるかもしれない。

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 現在、実験室で使うような減圧蒸留装置を使ってブルーチーズの香りのするカクテルを作るなど、カクテル作りの手法も進化を遂げている。ただリキュールやシロップを混ぜ合わせるに留まらず、素材のおいしさを追求し、技術を用いて新たなカクテルを生み出す分野は「ミクソロジー」と呼ばれている。Vocktailが本格的に製品化されれば、ミクソロジーもさらに発展し、未だかつてないカクテルが誕生するかもしれない。未来のバーでは、バーテンダーはシェイカーを振ることをやめ、タブレット操作でカクテルを作る姿が当たり前になるかもしれない。

 食べ物や飲み物の進化には、新素材の開発や調理技術の進歩といったアプローチももちろんあるが、VR・AR技術を使って、私たちの五感を騙して新たな食体験を生み出すことも可能となるだろう。Vocktailのようなデバイスを使って味わえるお店の登場に期待したい。

執筆:大嶋絵理奈(Facebookでフォロー

参考
Vocktail: A Virtual Cocktail for Pairing Digital Taste, Smell, and Color Sensations (元論文)
[MM2017] Vocktail: A Virtual Cocktail for Pairing Digital Taste, Smell, and Color Sensations (元動画)

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