「安全だけど捨てられる食品」を魅力的に見せるための心理学
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 多くの国で、まだ食べられる食品が捨てられてしまう「フードロス」が大きな問題となっている。アメリカでは、生産された食料のうち40%がゴミになっているという。こうした廃棄を減らすために、捨てられる運命にある食材を再加工して別の食品して蘇らせる試みが始まっている。しかし、いくら再加工に成功しても、一般の人に受け入れてもらえなければ意味がない。人々が受け入れやすい形でフードロス問題を解決していくにはどうしたら良いのだろうか。

再加工した食品の普及にはブランディングが重要

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 安全ではあるが廃棄されてしまう食品には、品質には問題がないが形が悪い野菜、賞味期限切れの食品、売れ残った食品などがある。生産や加工、流通、販売など、さまざまな面で食品の廃棄は生じる。これらの食品の中には栄養価が高く、再加工のやり方次第で食品としての価値を取り戻せるものがある。再加工の例としては、ニンジンやリンゴの皮を使った粉末スープ、ビール製造途中で生じた穀物から作ったグラノーラなどがある。このようにして作られた食材は「value‐added surplus products」(VASP)と呼ばれる。(うまい日本語訳が分からないが、「価値を付加した余剰品」といった具合だろうか。)

 ただし、多くの人は自然ではないものを嫌ったり、捨てられるはずだった食材を使うことに対する抵抗を感じたりするものだ。このため、VASPを市場に普及させるためには、ブランディングや魅せ方が重要となってくる。たとえば、廃水を再処理した水を「再処理した水」ではなく「リサイクル水」と表現するだけで、消費者が受け入れやすくなったという研究事例がある。VASPも「再加工した食材」ではなく、別の見せ方をすることで、人々に受け入れやすい食品となる可能性がある。

魅せ方ひとつで肯定的な印象が生まれる

 そこで、アメリカのドレクセル大学の研究者らは、VASPを説明する言葉の違いが、VASPのイメージをどのように変えるかを調べた。

実験1)VASPは有機食品に似てると思われている

 まずは、スープ、ジュース、グラノーラ、パスタソースを用意して、次の3種類の説明を用意した。

・従来の食品:安全性が確認されている量の肥料・農薬・除草剤を使って作られた商品
・有機食品:肥料や農薬、ホルモン、遺伝子組換え技術などを使っていない食品
・VASP:他の製品を作る時に生じた副産物を使用した食品

 これらの説明から感じ取れる印象がどう変化するかを調べるために、「環境に優しい」「有機である」「普通の食べ物だ」の3つの項目について、実験参加者に1〜9で点数化をしてもらった。

 その結果、「環境に優しい」「有機である」の項目は、有機食品が最も点数が高かったが、VASPも有機食品と程度となった。一方、「普通の食べ物だ」は、従来の食品が最も点数が高く、VASPが最も低かった。このことから、人はVASPを「有機食品に似ているけど、普通の食べ物とは少し違う」と捉えていることがわかった。

実験2)「アップサイクル」という表現で好印象に

 次に、同じ食材を使ってそれらをVASPであると説明した上で、次の9種類のラベルを用意した。

「upcycled」「recycled」「upscaled」「rescaled」「reprocessed」「reclaimed」「upprocessed」「resorted」「rescued」

 これらについて好ましさをランク付けしてもらったところ、1位がupcycled(26.8%)、2位がreprocessed(19.6%)、3位がreclaimed(12.5%)となった。「アップサイクル」とは、単に資源をリサイクルするのではなく、より価値のあるものを作り出すというニュアンスを含んだ言葉である。

実験3)社会や環境に優しいと認識される

 さらに、「upcycled」や「reprocessed」という言葉から受ける印象を調べるために、実験1で使った食材について、「従来の食品」「有機食品」「upcycledしたVASP」「reprocessedしたVASP」と説明し、それぞれ「これを食べることで自分にメリットがある」と「これを食べることで社会にメリットがある」の項目を1〜7で点数化してもらった。

 その結果、社会へのメリットに関しては、「upcycledしたVASP」が最も高い点数となった。次点は「有機食品」で、「reprocessedしたVASP」は3番目だった。自分へのメリットに関しては、有機食品の点数が最も高く、次点が「upcycledしたVASP」、3番目が「reprocessedしたVASP」であった。

 これより、upcycledというラベル付けは、環境や社会に配慮した食材であるという印象を持たせることが分かった。人が物を買う時には、自分に役に立つことだけでなく、社会や環境に良いことも購買動機の一つとなることがある。「エコ」な商品が好まれることに、それがよく表れているだろう。upcycledというラベル付けは、VASPの購買動機の一つになる可能性があると言えるだろう。

 このように、一般的に抵抗が生まれがちな食材でも、表現する言葉の使い方次第で肯定的な印象を作ることができる。こうした知見はVASPに限らず、昆虫食培養肉など、未来の食材として期待される食品にも応用できるだろう。新しい食品を普及させていくには、見せ方に慎重になったほうがよさそうだ。

執筆:大嶋絵理奈(Facebookでフォロー

参考文献
From food waste to value-added surplus products (VASP): Consumer acceptance of a novel food product category

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