味がわかる繊細な舌に必要なのは「味覚受容体」だけではなかった
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ワインやチョコレートなどの、細かな味の違いがわかる舌に憧れる人もいるだろう。味の違いは、訓練を積むことで分かるようになると言われるが、生まれつき味を繊細に感じやすい場合もある。

私たちは、舌の上にある「味蕾(みらい)」という部分で味を感じている。味蕾で味を感じるメカニズムを追いながら、個人の味の感じやすさの違いの理由をみてみよう。

基本は、味覚受容体の数と種類

人が感じる味には、5種類ある。甘味・旨味・塩味・酸味・苦味だ。

味蕾には、味を感知するセンサーの役割を果たす「味覚受容体」が存在している。食べ物を食べると、味の成分がこの味覚受容体に結合する。そして、神経を通じて脳に味の情報が送られ、「甘い」「苦い」というような味の認識が生まれる。

goya(1)

また、甘味には甘味受容体、苦味には苦味受容体といった具合に、5種類の味それぞれに対応した味覚受容体が存在する。さらに、苦味を検出する受容体にはいくつかの種類があり、コーヒーの苦味とゴーヤの苦味はそれぞれ別の受容体が認識すると言われている。

味を感じる上でまず欠かせないのは、この味覚受容体だ。味覚受容体の数や種類の多さは、味の感度を高める一つの要因となるだろう。

たとえば、「超味覚」という言葉がある。超味覚とは、ある特定の苦味を感じすぎてしまう舌のことだ。超味覚の人は、「TAS2R38」という種類の苦味遺伝子を、人よりも多く持っていると考えられている。超味覚の人は苦味を感じすぎてしまう傾向にあるため、苦い食べ物が苦手であることが多いようだ。

「味覚受容体」以外の存在も味を左右する

ただし、味の感じやすさの決め手は、味覚受容体の数や種類だけではないことが、昨今の研究から明らかになっている。

味を検出してから、その情報を脳に送るためには、神経を刺激する必要がある。その鍵となるのが、「TRPM5」や「TRPM4」というものだ。TRPM5とTRPM4は、同じく味蕾の中にあるもので、味の成分が味覚受容体に結合したのをきっかけに活発になり、神経を刺激する。

マウスを使った最新の研究(*1)によればは、TRPM5とTRPM4を両方持っているマウスは、甘味・苦味・旨味への感度が高く、片方しか持っていないマウスでは感度が低下し、両方持っていないマウスは味をほとんど感じられなかったようだ。

cocoa(1)

また、TRPM5やTRPM4は、温度によって味が変化する現象にも関わると言われている。たとえば、温かいココアは、冷たいココアよりも甘味が強く感じられないだろうか。

一般的に、甘味は温度が高くなると強まることが知られているが、これは、温度が高くなるほどTRPM5やTRPM4が活発にはたらくためであるとわかってきた(*2)。

味の成分の量が同じだとしても、TRPM5やTRPM4が活発になることで、通常よりも神経をより刺激し、味を強く感じるようになるのだと思われる。

繊細な味覚は人を健康にする

このように、生まれつきの舌の繊細さは、味覚受容体の数と種類、そして、TRPM5やTRPM4の数と性能によって決まってくるのだ。ここまで読むと、自分は生まれつきどのような味覚なのかを知りたい人も出てくるのではないだろうか。

今では体質にまつわるさまざまな遺伝子検査キットが登場しているが、もし生まれつきの味の感じやすさの遺伝子検査を行う場合には、味覚受容体だけでなく、TRPM5やTRPM4の遺伝子も調べる必要があるだろう。

今のところ味覚に特化した遺伝子検査サービスは見当たらないが、研究の発展とともに、近い将来目にするようになるだろう。

ただし、食環境に応じて一時的に味覚受容体の数が増えたり減ったりすることはあるので、遺伝子と同じくらい、日頃の食環境も味覚にとっては大変重要である。

繊細な味覚は、食体験を豊かにしたり、あなたをグルメにするだけではない。「食べておいしい」と感じられることは、食欲を強めることにつながる。若いうちは、食欲が抑えられなくて太ってしまうといったこともあるが、味覚は加齢とともに衰えていきがちだ。

味覚の機能が衰えていくと、次第に食べることへの喜びが失われていき、食事の量が減って栄養不足や病気につながることもある。食べ物をおいしく食べられる能力は、人の喜びのみならず、生きていく上でも欠かせないものなのだ。

執筆:大嶋絵理奈(Facebookでフォロー

参考文献
*1 TRPM4 and TRPM5 are both required for normal signaling in taste receptor cells
*2 Heat activation of TRPM5 underlies thermal sensitivity of sweet taste

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