"甘味"の感受性が低い人は、幼児期から糖分を多くを食べやすい
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甘いものに目がない人、苦いものを偏愛する人。人それぞれ、好物な食べ物がある。私たちの食べ物の好みは、いつ、何によって決まるのだろうか。

食べ物の好みの決定には、先天的・後天的両方の要因が関係する。先天的な要因とは、遺伝子である。味覚や嗅覚の遺伝子の違いが、味への敏感さに影響し、好みを左右するのだ。

一方の後天的な要因とは、生後の食経験である。幼い頃は苦くて飲めなかったビールやコーヒーをおいしく感じられるようになるのは、食経験を積んだ結果である。

食経験の基礎は家庭内で作られる。離乳後の家庭内では少なからず、幼児が好むものを与え、苦手なものは与えなくなるような食の偏りが生じるだろう。

こうした意味で、先天的に決まっている食べ物の好みは、食経験の方向付けそのものにも関わる。遺伝子の違いが生み出す、食べ物の好みへの影響をみてみよう。

本能や遺伝で決まっている味の好み

味覚という感覚はそもそも、生存に必要な成分と、体を害する成分を食べ分けるために発達した感覚だ。

基本的に、人は生まれたばかりの時には共通して、エネルギー源のシグナルである「甘味」、タンパク質や核酸のシグナルである「旨味」、ミネラルのシグナルである「塩味」を好みやすく、腐敗のシグナルである「酸味」や、毒物のシグナルである「苦味」を嫌いやすい性質を持っている。

それ以外にも、味の強さの感じ方(感受性)が遺伝子によって変わることが知られている。甘味の感受性にかかわる「TAS1R2」遺伝子、苦味の感受性にかかわる「T2R38」遺伝子、油脂の味に関わる「CD36」遺伝子などは、遺伝子を構成するDNAの配列の一部が異なるだけで、味の感受性が低下してしまう。

味の感受性が低い遺伝子を持っている人は、たくさんの量を食べないと味を強く感じづらいため、甘いものや脂っこいものをたくさん食べがちになるといった傾向が生じうる。

人は成長するにつれて、味覚だけでなく、嗅覚や食感、見た目、情報など様々な刺激を統合して味を認識するため、こうした傾向がいつまでも続くわけではない。

しかし、初期段階で"良い印象"を抱いた食べ物は、その後も好んで食べ続けられやすいだろう。成人後に甘いものや脂っこいものを食べ過ぎてしまうのは、こうした背景も一つの理由なのかもしれない。

味の感受性は日々の食事内容を変える

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実際に、遺伝子による味の感受性の違いが、幼児が日々食べるものに無意識的に影響する可能性を示した事例がある。

2018年1月に「Nutrients」誌で発表された研究では、先に述べた甘味・苦味・脂味それぞれの感受性に関わる3種類の遺伝子の配列と、幼児が3日間のうちに食べた軽食の栄養素やカロリー、総量などとの相関が調べられた。

この研究によれば、脂味の感受性が低い、CD36遺伝子配列の一部が「AA」である幼児は、他の配列を持つ幼児と比べて、重量あたりのカロリーが高い軽食を食べる傾向にあった。

さらに、甘味の感受性が低い、TAS1R2遺伝子配列の一部が「TT」である幼児は、糖分からカロリーを摂取しやすく、朝よりも夕方に軽食を食べる傾向にあった。

これは47人の幼児を対象にした小規模な研究であるため、確実なことを知るにはさらなる研究が必要ではあるが、幼い頃からすでに遺伝子によって食べるものが左右されている可能性と言えるだろう。

 

甘いものや脂っこいものの食べ過ぎは、肥満や生活習慣病にもつながるため、健康上無視できない問題だ。若い頃は気にならずとも、歳を重ねるにつれて問題は顕著になる。

食べ物の好みに関わる遺伝的要因の解明が進むにつれて、特定の食べ物を食べ過ぎてしまうことへの予防策を、個人個人に合わせて見つけられるようになるかもしれない。

執筆:大嶋絵理奈(Facebookでフォロー

参考論文
Single Nucleotide Polymorphisms in Taste Receptor Genes Are Associated with Snacking Patterns of Preschool-Aged Children in the Guelph Family Health Study: A Pilot Study

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