パンやココナッツに刻印!追跡タグを食べ物に直接印字できる新技術
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おいしさは食べ物に欠かせない要素だが、それ以上に欠かせないものがある。”安心して食べられること”だ。

どんなにインスタ映えする可愛いスイーツであっても、生クリームが腐っていたら、それは食べ物として失格であろう。しかし、食中毒や食品偽装といった食の安全を揺るがすニュースは、未だに無くならない。

近年では、食品を安全に流通させるために、食品にタグをつけ、店舗に届くまでの情報を記録する試みが増えている。タグを読み取ると、食品が作られた場所の情報や、輸送時の温度情報など、生産、加工、流通にまつわるさまざまな情報を知ることができる。

「トレーサビリティ」と称されるこうした透明な情報開示は、私たちが安心して食べ物を口にすることにつながる。

そんなトレーサビリティを支える技術は、年々進歩している。今年発表されたアメリカの研究によれば、食品に直接タグを印字できる可能性もあるという。

食品情報を記録するタグ「RFID」

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食品情報の追跡を可能にするには、食品を入れたダンボールや包装の表面に、個別の情報を記録したタグをつける必要がある。一般的な商品のパッケージについている白黒縦線の「バーコード」も、タグの一種だ。

ただ、バーコードには記録できる情報の量に上限があることから、トレーサビリティのタグとしては、よりたくさんの情報を記録できる「QRコード」や「RFID」といった種類のタグが使われることが多い。

中でも特に、RFIDの使用が増えている。 QRコードは、一度記録した情報を読み取ることしかできないほか、"QRカメラ"のような読み取り装置をQRコードに近づけなければならない。しかし、RFIDは、情報を読み取るだけでなく書き込むこともでき、少し離れた位置からも読み書きを行うことができる。

このため、ダンボール一箱一箱のタグを手動で読み取る必要がなく、たとえば倉庫のゲートの両脇に読み書き用のセンサーを用意しておけば、大量のダンボールをカートに乗せたまま通過するだけで、すべてのダンボールのタグの情報の読み書きを一斉に行うことができる。

RFIDは、SuicaやEdyといった電子マネーや、レンタルビデオ店の在庫管理など、身近な場面でもすでに使われている技術だ。たとえば、TSUTAYAの入口の両脇に立っているセンサーは、商品に付属されているRFIDタグを読み取っている。貸出の手続を行なっていない商品を持って通過すると音が鳴るのは、このようなしくみのためである。

「食べられるRFIDタグ」の誕生なるか?

RFIDタグには、温度や湿度のセンサーが付属されたタイプのものもある。生鮮食品や冷凍食品の輸送において、温度や湿度の履歴情報は、何か問題が起きた時の原因追求に役立つ。トレーサビリティ利用の需要が高まるにつれて、こうしたセンサーの改良は年々進んでいる。

今年の1月には、イギリス・マンチェスター大学の研究者らが「グラフェン」という物質を使ってRFIDに埋め込める湿度センサーの開発に成功した(*1)。

グラフェンは、ナノサイズの極小な物質でありながら、強度やしなやかさを持っているほか、入手も簡単な物質である。グラフェンがセンサーとして使えるようになることで、センサーの小型化や量産にもつながると言われている。

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(Photo Credit:Jeff Fitlow/RICE UNIVERSITY)

また、今年の2月には、アメリカ・ライス大学の研究者らが、パンやじゃがいも、ココナッツなどにレーザーを照射することで、食品の表面にグラフェンを作り出すことに成功した(*2)。

これまで、レーザーでグラフェンを作り出すには、特定の大気条件や物質など限られた条件が必要だったが、この方法では、通常の大気の中でレーザーを当てて、植物の細胞壁に含まれる「リグニン」という成分を変化させることで、グラフェンを作り出すことができる。

研究者らによれば、食用グラフェンの安全性試験などをクリアできれば、RFIDタグを食品に直接焼き付けることもできるようになるかもしれないという。

食品1個ごとにRFIDタグをつけることができれば、同じダンボール内における個体差の追求や、家庭内での保管時のモニタリングなどにも使え、口に運ばれるまでの食品の状態をより詳細に知ることが可能となるだろう。また、食品の模様やデザインとしての機能とセンサーの機能を両立させられるのも面白い。

 

近頃話題の「ブロックチェーン」もまた、食品のトレーサビリティを後押しする技術だ。ブロックチェーンは、情報の追加や変更といった記録行為そのものの履歴を残すことができるため、より安全性の担保につながるとして期待されている。

食品業界では、見かけや食感が面白い食べ物など、"食体験そのもの"を進化させるような食べ物の開発が進んでいるが、こうした食の進化は、様々な技術を組み合わせて食の安全を守った上でこそ成り立つものだろう。

執筆:大嶋絵理奈(Facebookでフォロー

参考文献
*1 Graphene Research Targets Wireless Sensors for IoT
*2 Laser-Induced Graphene by Multiple Lasing: Toward Electronics on Cloth, Paper, and Food

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