ストレスの大きい作業は不健康な食事を促す(研究結果)
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絶妙においしそうなパッケージ、隣りの人が食べてるものが魅力的、とにかくお腹が空いている…私たちが食べ物を食べたくなる動機はさまざまだ。実は、一見食事とは無関係に見えるようなスマホやパソコンの使用も、食べ物の選択に影響する。

今月、アメリカの研究者らが、学術誌『Computers in Human Behavior』に発表した研究によれば、複数のデバイスを使った負荷の高い不快なマルチタスク作業は、不健康な食べ物の選びやすさに影響するという。

スマホやパソコンが食べたいものに影響する?

現在の私たちの生活には、スマホやパソコンなどのデバイスは欠かせない存在となった。仕事や情報収集、人とのコミュニケーションの利便性が向上する一方で、「スマホ中毒」「ドライアイ」など、デバイスの使用がもたらす弊害も見られるようになった。

実は、このように目につきやすいものに限らず、これらのデバイスの使用は、私たちの自覚のないところにまで影響を及ぼしている。食べ物の選択は、その一例である。

これまでの調査で、子供がテレビゲームやパソコンを使用してる間は甘い飲み物の消費が増加することや、ソーシャルメディアに依存的な学生は食生活が不健康になる傾向があることが報告されている。

実生活では、単一のデバイスに限らず、複数のデバイスを同時に使うことも多い。たとえば、テレビを見ながらスマホでTwitterに書き込むといったものである。複数デバイスを使用するマルチタスクには、楽しいものもあれば、ストレスに感じるものもあるだろう。

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アメリカ・ミシガン州立大学の研究者らは、こうしたマルチタスクが食べ物の選択に与える影響を調べるために、次のような実験を行った(*1)。

実験参加者は、以下の4つのいずれかの作業を行った。

1)テレビを視聴
2)テレビ視聴+スマートフォンでチャット
3)テレビ視聴+スマートフォンでチャット+パソコンでWikipediaを読む
4)テレビ視聴+スマートフォンでチャット+パソコンでAmazonでショッピング

このとき、作業をしながら「健康的な軽食(ミニキャロット、プチトマト、アーモンド)」と「不健康な(栄養の少ない)軽食(M&Mチョコレート、プリングルスチップス、シュガーキャンディ)」を食べることを許された。

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(実験で使われた軽食。画像:Screen overload: Pleasant multitasking with screen devices leads to the choice of healthful over less healthful snacks when compared with unpleasant multitasking より)

研究者は、それぞれの作業を行っている最中に食べられた軽食の量を記録した。また、参加者は、それぞれの作業の快適さを回答した。なお、テレビの放送やすべての作業の内容は、食品と一切関係のないものであった。

その結果、負荷が高いかつより不快だと判断された3)の作業を行っている間は、他の状態と比べて不健康な軽食を摂取する割合が高くなった。一方で、負荷が高い作業でありながらもより快適であると判断された4)では、不健康な軽食よりも、健康的な軽食の方が多く摂取された。

つまり、同じような負荷の高いマルチタスクを行うのでも、その作業の快適さが、何気なくつまむ食べ物を左右するらしいことが分かったのだ。

また、負荷の小さい2)のマルチタスクを行った時の軽食の消費は、1)の単一作業時のものと違いがなかった。これより、作業の負荷が大きい時に、その快適さや感情が、食べ物の選択に影響することらしいと言えた。

「感情」による脳状態や認知の変化

同じ負荷の大きいマルチタスクを行うにしても、より快適であると判断されたマルチタスクでは健康的な食べ物を選ぶ割合が高まり、より不快であると判断されたマルチタスクでは不健康な食べ物を選ぶ割合が高まった理由として、研究者らは2つの理由を挙げている。

1)不快さが脳のリソースを余計に奪う

脳がはたらくときには「認知資源(リソース)」を消費するとされており、リソースには上限があるため一度にはたらくことができる量には限りがあると考えられている。

たとえば、日本語では複雑な思考や論弁ができるにもかかわらず、外国語に慣れない人が外国語を話すときには単純な文章でしか話せなくなるのは、脳のリソースが「言葉を話すこと」に多く消費され、「複雑な思考」に回せるリソースが不足しているためだとされている。

一般的に、健康的な食べ物を選ぼうとする時には、より合理的で理性的な思考が必要だと言われている。たとえば「巨大なパフェは甘くて脂肪たっぷりでおいしそう…でも太りたくないから、ゼリーの方にしとこう」といった具合である。こうした思考を挟んでからの選択は、「巨大パフェおいしそ!これにしよ!」と直感的に選択する場合よりも、脳のリソースを消費する。

しかし、負荷の高い作業によってただでさえリソースがない中、不快さによってさらにリソースが消費される状況では、理性的に食べ物を選ぶことに使えるリソースが不足すると考えられる。これが、より直感的においしそうに見える不健康な軽食の選択につながったと思われる。

2)感情が「利益」の感覚を変化させる

また、過去の研究(*2)では、ポジティブな感情を抱いている時には、より長期的で抽象的な利益を追求する傾向があり、ネガティブな感情を抱いている時には、より短絡的で目先の利益を追求する傾向にある結果を示している。

つまり、ポジティブな感情を抱いている時には、健康やダイエットなど長期的な目標につながる食行動をとりやすく、ネガティブな感情を抱いている時には、その場の空腹や快楽のための食行動をとりやすいというのである。

このように、感情は利益の時間軸を変化させることがあるようだ。今回の実験においても、マルチタスクに伴う感情が、利益の価値を変化させた結果、より快適な作業では健康的な軽食を、より不快な作業では不健康な軽食をそれぞれ選ぶようになったのかもしれない。

 

マルチタスク作業に限らず、普段何気なく行っているさまざまな行動は、食べ物の選択に影響を与えている可能性がある。ダイエットや美容には「強い意志」が必要であると思われがちだが、健康的な食事を維持しやすい環境を整えることも大切かもしれない。

執筆:大嶋絵理奈(Facebookでフォロー

参考文献
*1 Screen overload: Pleasant multitasking with screen devices leads to the choice of healthful over less healthful snacks when compared with unpleasant multitasking
*2 Better moods for better eating?: How mood influences food choice

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