ストローで高血圧を予防?味をコントロールする「電気泳動ストロー」とは
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 何も考えずに好きなものを好きなだけ食べることは、なかなか叶わぬ贅沢である。食べることは幸せな行為である一方で、度が過ぎるとさまざまな体の不調につながるからだ。特に、和食は塩分が多く使われているため、日本人はつい塩分を摂りすぎてしまう。塩分を取りすぎると高血圧などのリスクが上がることから、調味料やレシピを工夫した減塩への取り組みも盛んだ。しかし、やはりおいしさの満足度は下がってしまいがちであり、塩分控えめな日々を送り続けるのは難しい。

 食べ物の味を変えないことと、摂る塩分量を減らすことは、両立できるのだろうか。この問題に対し、とある「ストロー」を使えば解決できると考える研究者がいた。

ナトリウムのとりすぎを防ぎたいけれど…

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 大阪大学大学院でヒューマンインターフェースの研究をしている櫻井健太さん、安藤英由樹准教授らの研究グループは、塩味の感じ方を変えられるストローを提案した。どうやら、ストローに微弱な電気を流すと、舌の表面に届く味物質の量を調節することができるようなのだ。このストローはどのように味の強さを変え、減塩対策となりうるのだろうか。その原理を追ってみよう。

 塩味の成分は「塩化ナトリウム」と呼ばれるもので、ナトリウムが含まれている。高血圧のリスクは、ナトリウムを過剰にとることで上がると言われているため、ナトリウムのとりすぎを防ぎたいところだ。

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 味は、舌の上の味蕾(みらい)という器官で感知される。塩化ナトリウムが味蕾に到達すると、人は塩味を感じるようになるのだ。味蕾に届く成分の量が多いほど、味を強く感じやすい。塩味であれば、味蕾の上にある塩化ナトリウムの量が多ければ強い塩味を、少なければ弱い塩味を感じるようになる。

 つまり、普通の食事において、ナトリウムをあまりとらないようにするのであれば、塩などの調味料の使用を控えめにした薄味の味付けにせざるを得ない。しかし、薄味では味の満足度が下がりがちだ。できれば、味は同じまま、摂取するナトリウムの量を減らせるのが理想的である。果たして、そんなことはできるのだろうか?

ストローに電気を流して味物質の量を調節

 この疑問に「YES」と答えることができるのが、電気を流したストローだ。

 水溶液中のナトリウムイオンは、電気をかけると陰極(マイナス)側へ移動する性質を持っている。この性質を利用し、水溶液がマイナス、舌がプラスになるように電気を流すことで、ナトリウムイオンを舌から遠ざけることができる。

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 櫻井さんらは、ストローに電気を流して、ナトリウムイオンを舌から遠ざけることができるかを調べた。まず、あらかじめ濃度がわかっている塩水を味見してもらい、味の強さを覚えてもらった。次に、濃度がわからない塩水を、ストローに電気を流しながら飲んでもらった。その結果、ストローに電気を流すと、実際に味が弱まることがわかった。

 また、流れる電気の強さを変え、味見した塩水と濃さが同じになる電気の強さを探しながら飲んでもらった。すると、電気を流す量が増えるに従い、味が弱まる度合いが高まることが明らかになった。

電気刺激には味を強める効果があった!

 こうして、ストローに電気を流すことで、ナトリウムイオンを舌から遠ざけることに成功した。ただ、これでは塩味の強さが弱まってしまい、薄味の減塩対策と変わらない。ところが、面白いことに、このような電気刺激で味を抑えた直後には、逆に味を強く感じることがわかっているのだ。

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 これを調べるために、一定の強さの電気を、流す時間を変化させてストローに流した。その結果、電気を3秒間流し続けた時には、およそ2秒間味が強く感じられることがわかった。人によっては、最大で3倍近く味が強くなったようだ。しかし、2秒間というのは、食べ物を噛んで飲み込むための時間としては短いという問題があった。そこで、電気の流し方をパルス波としてピッピッピと断続的に流すように変えてみたところ、味を強く感じる時間の長さを伸ばすことができた。

 こうして、ストローに電気を流すことで、摂取するナトリウムの量を減らしながら、強い塩味を感じることができる可能性が浮上した。櫻井さんらは、旨味の成分である「グルタミン酸ナトリウム」にも同じ効果があるかどうかについて、これから研究を進めていくようだ。また、肥満や糖尿病につながる糖分のとりすぎを予防するために、甘味成分でも同じようなことができないかについても調べていきたいという。

 今はストローの形状であるが、今後このようなしくみを用いたデバイスが新たな減塩対策として市場に出回ってくるのかもしれない。日本で増え続ける生活習慣病の予防法として、さらなる研究の発展を願って行きたい。

 本稿の執筆にあたり、原稿のご校閲および写真のご提供にご協力くださった大阪大学の櫻井健太様に深く御礼申し上げます。

執筆:大嶋絵理奈(Facebookでフォロー

*参考文献
Saltiness and Umami Suppression by Cathodal Electrical Stimulation

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